レビュー

経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」まで残り2年。企業・自治体のDXとその過程で生じる軋轢や摩擦に伴い、経済損失が年間兆円単位で生じると危惧される。

2年後、DXはどれほど進んでいるだろうか。
「20年前から今日に至るまでBtoB企業は同じ過ちを繰り返し、その度に私は同じような改善提案を繰り返してきた。しかし、そんな活動にうんざりしている」。本書の冒頭でそう嘆く著者は、DXソリューションやコンサルティングを手掛ける株式会社WACULの代表取締役、垣内勇威氏だ。前著『デジタルマーケティングの定石』では、デジタルマーケティングでの正解をつぶさに紹介し、多くの読者から好評を博した。
ただ、「定石を使ってビジネスを大きくした」という声はあまり聞かなかったという。そうした問題意識から、本書は「正解」を示すことにとどまらず、「実行」フェーズまで踏み込んだ提言を行い、読者が実行への足掛かりを得るところまで導いてくれる。
その真髄となるのが「組織の定石」だ。多くの組織が関係する部署の同意を得られずに失敗を繰り返してしまう。関係部署の信頼なしに、改革は進められないのである。社内に確固たるマーケティング組織を築き、強化していくには、地道且つ大掛かりな努力を擁する。それは「世直し革命」とさえ呼べる大事業だと著者は強調する。

本書は、BtoBに携わる営業・マーケティング部門はもちろん、販促・広報・開発部門など幅広い職種を読者として想定する。そのため、全社的で幅広い、組織横断の共通理解が欠かせない。本書の存在は、組織と組織をつなぐ潤滑剤となってくれるだろう。

本書の要点

・革命チームがまずはじめにすることは「クイックウィン」による信頼関係の構築と「行動観察ショー」による共通言語作りだ。これら抜きに実効性のある改革は始められない。
・チームがとる戦略は「ターゲット企業の数」「顧客が既存か新規か」「顧客が商品知識を持ち合わせているかどうか」の3つの分類軸で捉える。
・トップ営業が生み出す顧客体験を再現性のある施策として落とし込むことが、BtoBマーケティングにおける常道である。



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