レビュー

「ど真剣に生きてみろ」。帯に書かれたこの言葉が、心に突き刺さってくる。

稀代の経営者であった故・稲盛和夫氏。京セラのカリスマ創業者にして、松下幸之助氏と並ぶ「経営の神様」だ。稲盛氏の功績は枚挙にいとまがない。京セラの躍進だけでなくKDDIをはじめとする数々の新事業参画、「奇跡の再生」と注目されたJAL再建、さらには稲盛財団の立ち上げ、児童養護施設・乳児院の設立、盛和塾を通じた若手育成。こうした多種多様な形で、世の中に大きな影響を与え続けた。
著者は評伝の執筆を生業とし、数々の偉人の生涯に光を当ててきた人物だ。偉人の人生をたどることで、人生の意味や生きる目的が見出せるのではないか。要約者も、本書を通じて稲盛氏の人生を追体験するかのような気持ちで「崇高な魂の軌跡」にふれ、心がふるえた。
稲盛氏はこう語った。「成功するには一定のルールがある。それは徹底的に企業経営を考え、その向こうにある人間というものを考えに考え抜いた結果到達した境地なのだ」。このルールをひとことで表すと、「利他の心」であるという。
利他の心に反するものはやがて滅ぶ運命にある。社会をかえりみないビジネスに未来はないのだ。
これは昨今注目されているESG投資や人的資本経営とも重なる部分がある。昭和の時代と比べて働き方は大きく変わった。だが、組織を動かしているのは人であり続ける。「ど真剣に生きる人」の輝きは今も昔も変わらない。

本書の要点

・稲盛和夫氏は、受験の失敗、就職活動の挫折を経て、松風工業で渦の中心となって懸命に働いた。その思いの強さはフィロソフィとして語られ、周囲の魂を揺さぶり、伝播していった。
・京セラ創業後は、アメーバ経営、京セラ会計学を生み出し、世界の京セラへの道を開いた。
・KDDIの設立、JAL再生。稲盛は一貫して大義のためにチャレンジを続けてきた。その根底にあるのは、人として正しいことをしようという「利他の心」だった。



フライヤーでは、話題のビジネス・リベラルアーツの書籍を中心に毎日1冊、10分で読める要約を提供(年間365冊)しています。既に2,100タイトル以上の要約を公開中です。exciteニュースでは、「要約」の前の「レビュー」部分を掲載しています。

編集部おすすめ