レビュー

日立製作所、NEC、NTT、KDDI、凸版印刷――。名立たる日本企業が手を組み、2017年から果敢にオープンイノベーションに取り組んできた。

主導したのはJR東日本。「モビリティ変革コンソーシアム」、通称MICをハブとして、様々なスタートアップを含む約130社が集結し、社会課題の解決に知恵を絞ってきた。
MICはモビリティと名を冠しているものの、交通系を問わず、実に多様な企業・団体が名を連ねる。その共通理念は、「すべての人の個性が尊重され、つながり、豊かさ・信頼が拡がる社会の実現」を目指すというものだ。常に「生活者視点」を最重視する。
このMICの営みを追った本書は、3つのパートから成る。第1~2章は不確実性の時代に必要なイノベーションについてまとめ、第3~4章でMICの考え方や課題解決の成果を紹介し、第5~6章ではオープンイノベーションを成功に導く7つの条件やMICの次期構想を解説している。要約ではその順にポイントを抽出した。
MICが発足した2017年当初は、その3年後の東京五輪・パラリンピックも視野に、活動を強化していた面もある。しかし新型コロナウイルスの猛威により、社会のありようは一変した。MICの参画者らはこの変化に柔軟に適応し、確実に成果を積み上げ、知見や経験を蓄えてきた。まさに複数産業横断型の小さく閉じない枠組みにより、本領を発揮した成功例と言える。

MICは当初フェーズの5年を終え、フェーズ2へと移行する。「空飛ぶクルマ」など、かつては夢物語だったような構想も、地に足を着けて真摯に検討を進めてきた大規模なコンソーシアム。その軌跡と展望は、これから社会、世界に起こる変革を占ううえで重要な示唆を与えてくれるだろう。

本書の要点

・「モビリティ変革コンソーシアム(MIC)」は1社単独ではなし得ない変革を実現していくためのオープンイノベーションのプラットフォームだ。
・「イノベーション3.0」は「生活者視点」に基づき、N対Nで共創していく新世代型の変革である。
・MICの持続発展的な活動には、「既存の枠組みにとらわれずに全体方針をデザインする」など〝7つの成功の条件〟がある。



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