レビュー
本書は、作家で演出家の鴻上尚史氏と脳科学者である中野信子氏による、コミュニケーションについての対談である。
テーマとなる「同調圧力」は、日本人の間で特に強いといわれ、職場や学校などで問題になることが多い。
一見、エンタメである演劇と脳科学という分野は畑違いのようにも見える。しかし、演劇は舞台上で行われる模擬的なコミュニケーションを観客に見せるものであり、脳科学において、コミュニケーションはホモ・サピエンスの脳の発達を語る上で欠かせない。すなわち、両者とも人間のコミュニケーションを分析するプロといえる。
本書は著者たちの個人的な経験をもとに、ジェンダー、テレビやSNS、教育といった、幅広いジャンルにおける同調圧力についての原理と対策が対話される。全く異なる立場から同じ方向を見つめたとき、そこにどのような共通項が存在するのか。演劇ファンや脳科学ファンのみならず、見えない「空気」に息苦しさを感じている人や、同調圧力について考えを深めたい教育関係者にも一読を進めたい。
本書の要点
・日本人のコミュニケーションは、身近な人との「世間」を基本にしてきた。しかし「世間」が中途半端に壊れた現代は、不特定多数の「社会」と繋がらねばならず、コミュニケーションに混乱が生じている。
・日本人は遺伝的に不安になりやすく、協調性が高い傾向にある。
・コミュニケーション能力とは、もめた時に議論できる能力を指す。手本になる人のまねをすることで、コミュニケーション能力はアップする。
・「弱い世間」と繋がることで、同調圧力の息苦しさから逃れられる。
フライヤーでは、話題のビジネス・リベラルアーツの書籍を中心に毎日1冊、10分で読める要約を提供(年間365冊)しています。既に2,100タイトル以上の要約を公開中です。exciteニュースでは、「要約」の前の「レビュー」部分を掲載しています。