レビュー
本書の監訳者である橘玲氏は「残酷すぎる人間法則」を「人生においてただ一つ、本当に重要なものは他者との関係だ」と要約している。そしてその上で「問題は、どうすれば『他者とうまくやっていけるか(Plays Well with Others)』がわからないことだ」とする。
著者のエリック・バーカー氏は、ベストセラー『残酷すぎる成功法則』で、一般的に「成功哲学」とされるものを検証した。続編となる本書では、その手腕を発揮して、他者との関係における「真実」を明らかにする。
「はじめに」で論じるのは、人間関係の潤滑油だとされている「傾聴」についてだ。実は傾聴が効果を発揮するシーンはごく限定的で、夫婦をはじめとする長期的な関係には適さないという真実が示される。
これ以外に著者は、「人は見た目で判断できるのか?」「『まさかのときの友こそ真の友』は本当か?」「『愛はすべてを克服する』のか?」「ひとは一人で生きていけるのか?」という4つの問いに挑む。
要約者にとって特に新鮮だったのは結婚を巡る内容だ。今日、私たちは結婚を「愛の結実したもの」と捉えている。ところが歴史を紐解くと、結婚は「愛」ではなく「経済」のためになされてきたものであったという。
このように、通説とされるものを科学的に崩していく本書は非常に刺激的で、通読にそう多くの時間を要さなかった。人間関係を巡る壮大な論文と捉えることもできるし、人間関係にまつわる自身の知識を迷信から解き放ち、より正確なものへとアップデートするための実用書としても読める一冊だと感じた。
本書の要点
・第一印象の正しさは7割程度とされる。その正確性を高めるには「速断を避けること」と「対象と心理的な距離を置くこと」、「反対の立場で考えてみること」が効果的だ。
・友情は幸福と健康に大きく貢献することがわかっている。それにもかかわらず、友だちとの関係を維持する努力は後回しにされがちだ。
・「ひとは一人では生きていけない」と言われるが、孤独は主観的な感情であり、実際に一人でいるかどうかは重要ではない。
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