レビュー
会社員として働く40代、いわゆる「氷河期世代」に向けたキャリアを考えるための本である。40代を過ぎ、かつて約束されるはずだった会社での役職を手に入れられず、「何者かにさせてもらえなかった」という氷河期世代は絶望を抱えている、というのは健康社会学者の著者の言葉である。
著者は以前、flierのインタビュー(https://www.flierinc.com/interview/interview201b)の中で、「サラリーマンの生活は必ず終わりを告げ、肩書も無意味になる。そんなときにどう生きていけばいいのか? 科学的なエビデンスに基づいた『幸せになるための方法』を伝えることで、迷いや恐れを抱く方にエールをおくりたい」と語っている。そして、かれらがいずれ死の入り口に立ったとき「人生思い通りにならなかったけど、結構おもしろかった」と思えるように、本書は書かれている。
40代という時期では、これまで耐え忍んできた会社での地位に奇跡的な変化が起こらないことに気づき、加えて親の介護や自分自身の病気など、自分の努力ではどうにもならないこともたくさん生じる。そんなとき、人生のままならなさにただ絶望するのではなく、自分の行動を具体的に変え、主体的に動き続ければ、必ず変化が訪れると著者は保証する。決して「何者」かになろうとするための主体的行動ではなく、「何者」でもないありのままの自分でも誇らしい人生だと思えるような方向に転換していく。不遇な時代を生きてきた氷河期世代であっても、そうした力があるということを本書は信じさせてくれる。その秘訣を知りたい読者は、ぜひ手に取ってみてほしい。
本書の要点
・他者から羨望の目で見られたり、スポットライトを浴びたりした瞬間、「何者かになった気分」という勘違いが始まる。外的な力である地位や立場は、自分の信念を忘れさせてしまう。
・根拠なき楽観には注意しなければならない。人間の生きる力は、ありのままの厳しい現実を受け入れてこそ引き出される。
・社会的動物である人間は、他者に頼ったり頼られたりしながら、「強い自己」を確立する。世間の評価に惑わされずに「強い自己」を作ることで、成熟した大人になる。
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