レビュー

歴史を学ぶ際、年号と出来事を丸暗記しても、その背景にある時代の流れや人々の価値観までは理解できない。
それは本書で取り扱う行動経済学においても同じだ。

「ナッジ」「ファスト&スロー」「プロスペクト理論」などを単独で理解していても、これらがどのように影響を与え合っているかまでは、多くの人がきちんと捉えられなかったのではないだろうか。
本書は、アカデミックの世界においてあと100年はかかると言われた行動経済学の体系化を、ビジネスパーソン向けに整理した著者のチャレンジの成果である。著者の整理する枠組みに従って、バラバラだった行動経済学の主要理論を俯瞰できるようになり、より一層行動経済学の本質を掴むことができるだろう。「行動経済学」博士としての知識を武器に、欧米を中心とした様々な業界の企業をコンサルティングしてきた経験が存分に活かされている。多くの論文・研究もベースにした重厚な内容で、納得感高く読み進められるはずだ。
今、世界は行動経済学という新しい学問に興味津々だ。FAANG(Facebook、Amazon、Apple、Netflix、Google)のような巨大テック企業はこぞって行動経済学を専攻した学生を囲い込み、それに歩調を合わせるかのようにアイビーリーグなどの有名大学で「行動経済学部」が新設されている。ビジネスパーソンにとってもはや不可避の学問、世界が注目する行動経済学の扉をあなたも開いてみてはいかがだろうか。

本書の要点

・行動経済学の本質である「非合理な意思決定」は、「認知のクセ」「状況」「感情」の3つの要因に分けられる。
・「認知のクセ」を生む理論に「システム1 vs システム2」があり、迅速な判断につながる「システム1」は間違った意思決定につながりやすい側面もある。
・天候や周囲の人の有無、物の位置、多すぎる情報などの「状況」が私たちの意思決定に影響を与える。その状況の制御は難しい。


・「淡い感情」である「アフェクト」は、人を動かすうえで重要な意味を持っている。



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