レビュー

「なんであの人あんなことでイラつくのかな」「猫が苦手って言っても理解してもらえない」といったことも、「VUCA時代に自分をどう変えればいいかわからない」「SNSの沼から抜け出せない」という悩みにも、仏教は明快に答えてくれる。なぜなら、仏教は宗教というよりも哲学、思考であるからだ。


著者の松波龍源氏は、起業家など在家の有志たちとともに実験寺院である「寳幢寺」を京都に建て、仏教という思想の本来の姿を取り戻すべく活動している僧侶である。本書ではその著者が得た知見をベースとして、人気のポッドキャスト番組「ゆかいな知性」で語られた内容をまとめている。著者は自身を「学者ではなく実践者である」と強調している。したがって、学術的に追究されてきた解釈などとは一部異なるものもあるかもしれない。しかし、それが、ものごとを固定的に考えず、あらゆる可能性を否定しない「空」の概念を根本に据えた、仏教の「良さ」でもある。すなわち、本書を読んで読者がどのように感じるか、それをどう活かしていくかこそが重要であるということだ。もちろん、そこに正しい学びがあることは大切である。
日々の生活に対してなんとなく息苦しさを感じているなら、本書は有効な処方箋になるに違いない。その苦しみがどこからやってきて、どう向き合えばよいのか、仏教思考はロジカルに示してくれる。どのページから開いても構わない。もしかしたら、要約の拾い読みでも何かを得られるかもしれない。それくらいの気楽さで、ぜひ本書をお楽しみいただきたい。

本書の要点

・仏教は、「苦しみを発生させないように」という考えを根本に持つ。それは、宗教や慣習というより、人の生き方を示す哲学と言える。
・ロジカルで科学的な哲学である仏教に「輪廻転生」があるのも、長期的・全体的な利益を説くためである。
・ネガティブなこと(苦しみ)を認めていれば、その回避も可能となる。その先に、ポジティブな人生がある。
・「空」とは、「固定的に考えてはいけないことを表した概念」である。



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