レビュー
フランスの現代思想家ルネ・ジラールが提唱した「模倣理論」によると、人間の人間たるゆえんは他人を模倣するところにあるらしい。そして、模倣からしか人の欲望は生まれないという。
タワーマンションなり、ブランド品なり、iPhone15なり、私たちが欲する対象はすべて模倣に起因している。「いいや、ほかでもない私こそが欲しいと思っているのだ」という反論は当然あるだろう。だがジラールによれば、どの欲望もすべて家族、友達、同僚など自分のなかのモデルに起因しているそうだ。この「模倣の欲望」は争いや競争につながり、そのループはモグラたたきのように延々と続くこともある。
では私たちは、湧いては止まらない欲望とどう付き合えばいいのか。
そこで本書の出番だ。私たちの欲望がどのように他人の影響を受けて形成されるのか、それがどう人生の選択や価値観に影響を与えるのか。そして、人生を満たす欲望とはどのように見つければいいのか。この本はただの自己啓発書ではない。欲望の本質を理解し、薄っぺらい欲望まみれの生活から脱却するきっかけを与えてくれる、思考の宝庫である。
読んでいただければ、自分の欲望をより深く理解したうえで、意図的にコントロールできるようになるはずだ。人に影響されやすい、欲しいものを手に入れても満足できない、欲望あふれる時代に疲れた。
本書の要点
・人間の欲望はモデルに強く影響される。集団や社会においては、人から人へと模倣の欲望が伝わり、そのサイクルがネガティブな方向へ進んでいくと競争や暴力を生むこともある。
・模倣の欲望における負のスパイラルから抜け出すためには、共感力を持って、個人に内在する「濃い欲望」を見つけ出すことが大切である。
・薄い欲望を濃い欲望へと変容させるためには、辛抱強く思考をめぐらす「瞑想思考」が必要である。これが加速度的に進む模倣の文化に対抗する手段となる。
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