レビュー
理想や目標が必要なのはわかるが「そうはいっても現実は難しい」と諦めてしまう。
同じ地味な仕事ばかりを続けており「こんな仕事ばかり続けていていいのか」と不安を抱く。
周囲がみな優秀に見え「自分はなんてダメなんだろう」と劣等感にさいなまれる。
黙々と真顔で仕事をしている人たちも、心のなかでは多くの葛藤を抱えている。エンゲージメント、モチベーション、心理的安全性が大事と言われているけれど、なかなかに難しい。しかも、リモートワークで働く姿が見えにくいときもある。働く人たちの「心」のさまざまな問題に、頭を抱えるリーダーは多い。
本書の著者、稲盛和夫は「人の心をベースに経営を行ってきた」伝説的な経営者だ。時代や環境の移ろいにも変わることのない原理、原則を重視し、「人を動かす原動力は公平無私」と言い切る彼を信じたいくつもの組織が、業績を着実に伸ばしている。
冒頭で例示したような「悩める社員」は、最近になって現れたわけではない。本書が書かれた約30年前にも共通の課題があったのだ。「世代が変わると価値観も変わる。自分の経験談は若い人たちにとって昔話でしかない」と自信をなくしていた先輩世代のビジネスパーソンも、著者の話を通じて「変わらないことも結構ありそう」と思い直せる。人生の大先輩が残した言葉にもしあなたが共感するなら、そこには若い人たちも熱烈に共感してくれる根があるに違いない。
本書の要点
・「仕事に打ち込み、世の中に役立ち、自身も幸せだった」と感じる生き方は、みなが求めるものだ。
・人として正しいことを正しいままに貫く原理原則を基準に判断・行動する。
・人を動かす原動力は公平無私だ。私利私欲を脱して「集団のために」を座標軸にする。
・相手から信頼してもらえる心に自らを高めなければ、信頼関係は生まれない。
・真の経営者とは、従業員を幸せにする「大きな愛」を使命と感じ、全身全霊で経営を行っている人である。
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