レビュー

未来予測の本は数多い。内容はさまざまだが、共通しているのは、遠い未来になればなるほど予測が難しいということである。


そんななか、世界でひときわ注目を浴びているのが本書だ。描き出す未来は2050年で、本書の出版からおよそ27年後となる。27年あれば大きな変化が起きるであろうことは想像にたやすい。しかし、具体的にどういう変化が訪れるのか、その輪郭を捉えることは困難だ。
ところが、本書は「変化をもたらす5つの力」を特定することで、2050年に各国がどのような存在になるのか、説得力のあるシナリオを提示している。著者は1994年に『2020年 地球規模経済の時代』の原著を執筆しており、当時著者が描いた世界はおおむね現実化している。豊富なデータと経済学、地政学、歴史的な洞察をもとに、複層的に未来図を描き出すその手腕は、見事としか言いようがない。
もちろん、本書とはまったく違う方向に世界が進む可能性はある。未来は複雑系の極致であり、何かが少し変わるだけで、最終的に大きな変化につながることもザラである。だが、変化が激しく先の見えない現代において、本書が予測と思考のための確かな足場を提供してくれるのは間違いない。教養書として読んでもおもしろいが、今後のアクションプランを考えるうえでも、きわめて有用な一冊である。

本書の要点

・世界に変化をもたらす5つの力とは、人口動態、資源と環境、貿易と金融、テクノロジー、そして政治と統治である。


・2050年もアメリカ合衆国が支配的なのは変わらない。一方で、南アメリカの発展は、人口と面積の半分近くを占めるブラジルにかかっている。
・人口が減り世界経済に及ぼす影響も小さくなるヨーロッパの重要性は下がっていく。
・アジアは非常に重要な地域になり、中国とインドの存在感はさらに大きくなる。ただしどちらの国も大きな課題を抱えている。



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