レビュー

「私のボス、宇宙に行ったの!」――。友人からこんなメッセージが送られてきたのは2021年の秋だった。

ちょうどZOZOの創業者、前澤友作氏が冬に国際宇宙ステーションに向かうことが話題になっていたときだ。
「え?前澤さんはまだ飛んでないし、それは誰?」と聞くと、医療系ソフトウェア会社の創業者だった。アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏率いるブルーオリジン社の宇宙船に乗り、「スター・トレック」でカーク船長を演じた俳優のウィリアム・シャトナーさんらとともに宇宙旅行を楽しんだという。少し宇宙が身近に感じられた瞬間だった。
昨今は宇宙旅行に加え、民間企業による様々な宇宙ビジネスが盛んになっている。どんなビジネスにも「ロマンとソロバン」が必要と言われるが、ロマンばかりが語られてきた宇宙開発の世界で、どうしてソロバンをはじいて帳尻を合わせられるようになったのか?そんな疑問を持ったら、ぜひ本書を手に取っていただきたい。
どんなビジネスにもリスクはあるが、宇宙開発はとびきりリスクの高い挑戦だ。莫大な投資をして開発したロケットや衛星が、一瞬にしてガラクタになってしまうこともある。新型ロケット「H3」の初号機とそれに搭載された衛星「だいち3号」は、2023年3月の打ち上げに失敗して海の藻屑となった。(その後、2024年2月には2号機の打ち上げに成功。)このように高いリスクをどう分散し、民間企業が活動できるようにするかも本書の大きなテーマのひとつとなっている。
宇宙開発に限らず、ビジネスに内在するリスク対応に興味のある方にも一読を勧めたい。

本書の要点

・いま、世界の宇宙開発をリードしているのは「ニュー・スペース」と呼ばれる民間ベンチャーだ。ニュー・スペースの参入は、ロケットの価格破壊や技術革新などをもたらした。
・イーロン・マスク氏率いるスペースX社は、ベンチャーの強みを活かした開発とコストダウンの工夫などにより「宇宙ベンチャーの雄」となった。
・米国では宇宙ベンチャーの上場が相次いでいる。彼らは巨額の赤字を抱えているにもかかわらず、将来の成長期待から高値で取引されている。



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