レビュー
「サム、君はアウトだ。クビになるんだ」
ときは2023年11月17日。
本書は、OpenAIを中心に、マイクロソフトやグーグルなどのキープレイヤーが織りなす企業ドラマを描いた一冊である。著者は、米国の主要メディアに公開された情報を丹念に調べあげ、OpenAIの正体に迫っていく。ChatGPTの開発秘話、アルトマン解任劇の舞台裏、著作権をめぐる問題、AGI誕生後の未来など、生成AIを取り巻く動向を一望することができる大充実の内容だ。
要約者が興味深く感じたのは、OpenAIの研究開発をリードしたイリア・スツケヴァーの存在である。トランスフォーマー技術の重要性をいち早く見抜く慧眼と高い技術力を持ちながら、ある種の「人間的な弱さ・妬み」を垣間見せている(彼はその後同社を離れ、新会社を設立した)。アルトマンやイーロン・マスク、サティア・ナデラなど、個性豊かな天才たちが繰り広げる人間ドラマにも注目したい。
生成AIの真の勝者は誰か。アルトマンが思い描く未来とはどのようなものなのか。
本書の要点
・アルトマンは人類全体に寄与する安全なAGIの実現をめざし、マスクとともにOpenAIを立ち上げた。その後マスクの離脱、マイクロソフトからの巨額出資を経て、大規模言語モデルの開発を加速させた。
・ライバルの動向を意識したOpenAI首脳陣は、2022年11月に急ごしらえのChatGPTを世に出し、これが世界的大ヒット商品となった。
・OpenAIはアルトマン解任騒動を乗り越えたものの、著作権問題など外部からの圧力にもさらされている。
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