レビュー

17世紀オランダの哲学者スピノザは、生前にわずか2冊の本しか出版していないにもかかわらず、300年以上を経った今なお、多くの思想家や哲学者に影響を与え続けている。その思想の核となるのが、彼の死後に発表された主著『エチカ』だ。

『エチカ』は難解な書物として知られているが、その内容をやさしい言葉で解説したのが、本書『はじめてのスピノザ』である。
著者の國分功一郎氏は、20年以上にわたりスピノザを研究してきた哲学者であり、NHK「100分de名著」で『エチカ』が取り上げられた際にはゲスト講師を務めている。本書は、その放送内容に新たな章を加えて、増補改訂版として出版された。
本書では、『エチカ』を軸に据えながら、スピノザの哲学を現代の視点から読み直し、自由、善悪、真理といった普遍的なテーマを探求している。明快な解説によって、『エチカ』の「難解」というイメージは取り払われ、スピノザ哲学の重要な概念が初心者にもわかりやすく提示されている。読者はスピノザの思考の流れを追体験しながら、自らの思索を深めることができるだろう。
自由とは何か、善悪とは何か、人はどのようにして真理を知るのか――。本書とともに、哲学者の思索の軌跡をたどりながら、根源的な問いに向き合ってみてはいかがだろうか。

本書の要点

・スピノザは、物事それ自体に善悪はなく、組み合わせの問題であると考えた。人の「活動能力を増大」させるのであれば、それはその人にとって善いものだということだ。
・古代ギリシア哲学は、本質とは「形」であるととらえていたが、スピノザは「ある傾向を持った力」こそが本質であると考えた。
・自由とは制約のない状態ではなく、与えられた条件の中で自らの力を最大限に発揮することである。


・歴史の転換点であった17世紀のスピノザの思想は、「選択されなかったもう一つの近代の思想」と解釈することができる。



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