レビュー
「不安は自由の可能性である」。これは、本書にも紹介されている哲学者キェルケゴールの言葉である。
本書『不安をしずめる心理学』は、不安という根源的な感情を真正面から心理学的に考察する書である。
著者の加藤諦三氏は、早稲田大学名誉教授として社会学・心理学に造詣が深く、長年「テレフォン人生相談」のパーソナリティを務めてきた。YouTubeのflierチャンネルにおいても、視聴者の悩みに新たな光を照らし、共感を呼んでいる。加藤氏は、不安に対処する方法として、「消極的解決」と「積極的解決」を挙げる。前者は合理化や依存などによって一時的に不安を避ける手法であるが、結果的に自己疎外につながってしまう。対して「積極的解決」は、困難に立ち向かい、不安の根源を洞察することで、自分自身を成長させる道である。
読み進める中で、心にグサリと刺さる言葉に出くわすかもしれない。だが、それこそが、不安とともに生きる私たちに向けられた誠実な対話であり、自己実現への道しるべだと要約者は受け取った。
本書を読み終えたとき、確かな変化が生まれているだろう。そして、アメリカの心理学者デヴィッド・シーベリーによる、「人間の義務はただ一つ。自分が自分であること」という言葉が心に響くのではないだろうか。
本書の要点
・不安には「現実的な不安」と「神経症的不安」の二種類がある。後者に関しては、自分がもっとも恐れているのは不安だという事実を理解しないと、自分の不幸を合理化してしまう。
・不安から一時的に逃げる「消極的解決」ではなく、自分の内面を見つめ直して乗り越える「積極的解決」が重要である。
・不安は人生を見直すサインである。自分が本当に信じられる価値に向き合うことで、人は自己実現の道を歩み出せる。
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