レビュー
誰もが毎日のように食べてきた「ごはん」。パンや麺類、はたまた完全栄養食などの新たな選択肢に押されて主食としてのお米の存在感が薄れつつある一方で、令和の米騒動が起こるなど、日本人とお米の関係は今なお深い。
著者の柏木智帆氏は、新聞記者として農薬や化学肥料を極力使わずに米づくりを行う取り組みを取材したことをきっかけに、「お米は単なる農産物ではない」と気づき、お米の世界にのめり込んでいった。営農組合に転職し、2年目には田んぼを借りて無農薬・無肥料での米づくりを開始。キッチンカーでおむすびを販売していた時期もあるという。現在は米農家としての経験を活かし、米食文化の再興とお米の消費量アップを目指す「お米ライター」として活動している。
本書の最大の魅力は、柏木氏の現場感覚に裏打ちされたトピック選びと解説だろう。「日本に水田稲作が伝わったのはいつ?」「班田収授法では、なぜお米が税に選ばれた?」「減反政策は何のため?」「令和の米騒動はなぜ起きた?」――こうした素朴な疑問に対して、本書はわかりやすく具体的に答えていく。
毎日のようにおいしいお米を食べていながら、その背景を何も知らない――そんな人にこそ、本書を手に取ってほしい。読み終える頃には、食卓に並ぶ一膳のごはんも、昼休みに食べるおにぎりも、きっとまったく違って見えてくるはずである。
本書の要点
・お米は富や権力を生み出し、常に争いの火種となってきた。
・1971年からは、米の在庫過剰を背景に、本格的な減反政策が実施されるようになった。
・戦後、お米中心の食生活が急速に姿を変えていった背景には、アメリカ主導の食の欧米化政策があった。
・2024年の夏、米の品薄と価格高騰が社会問題化し、「令和の米騒動」と呼ばれる事態が発生した。その要因は、供給と需要の双方にあった。
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