レビュー
「最近、ラジオが盛り上がっている」と感じている人は多いはずだ。SNSや動画全盛の今、ラジオという昔ながらのメディアがなぜ熱狂の渦中にあるのか――本書は、その背景を現場の視点から鮮やかに描き出す。
著者の冨山雄一氏は、ニッポン放送「オールナイトニッポン」の統括プロデューサーだ。中高生の頃にラジオに魅了された原体験をもち、新卒で就職したNHKから、「どうしても『ラジオ番組』とりわけ『オールナイトニッポン』という番組に関わりたくて」ニッポン放送に転じた。岡野昭仁氏、小栗旬氏、AKB48、山下健二郎氏など名だたるパーソナリティの番組ディレクターを担当し、現在はニッポン放送の番組全体を率いている。
都内で電波が届きにくかったこと、インターネットの普及により若者がラジオを聴かなくなったこと、コロナ禍でスタジオ収録ができなかったこと……本書を読むと、さまざまな難局を乗り越えて「ラジオ全盛期」を迎えた背景には、徹底した思考と工夫、そして行動があったことがわかる。特に、ライト層をコア化したり、ファンの熱量を増幅させたりする発想は、メディア以外の領域にも通じる示唆に富む。
東京ドームで16万人を巻き込んだイベントや、被災地に笑顔を届けた放送など、描かれるエピソードは臨場感と説得力を兼ね備えており、胸に迫るものがある。ラジオや「オールナイトニッポン」のファンはもちろん、コミュニティやブランドづくりに挑む人に強く勧めたい。
本書の要点
・2000年代、インターネットの普及などにより、若者のラジオ離れが進みつつあった。
・2010年代前半、東日本大震災でその真価を発揮したことは、ラジオにとって大きな転機となった。
・2010年代後半、radikoとスマホの組み合わせにより、ラジオは再び若い世代との接点を広げ、復活への歩みを進めた。
・SNSやradikoといった環境変化への迅速な対応と、コロナ禍という逆境の中で本質的価値を磨き上げたことにより、オールナイトニッポンをはじめとするラジオは今、全盛期を迎えている。
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