レビュー

努力すれば報われる──そう無邪気に信じられた時代は、すでに過ぎ去ったのかもしれない。本書は、個人の努力だけでは越えられない壁がいかに築かれ、それが社会にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにする。


著者の橋本健二氏は、早稲田大学人間科学学術院教授であり、戦後日本社会と階級研究の第一人者として多くの著作を世に送り出してきた。
本書によれば、現代社会には、かつての資本主義社会を構成していた資本家階級・旧中間階級・新中間階級・労働者階級に加え、新たな階級が登場した。労働者階級の内部に格差が生じ、正規雇用の「正規労働者階級」と非正規雇用の「アンダークラス」に二分されたのだ。格差拡大とともに現れたこの下層階級こそ、書名にもなっている「新しい階級社会」を象徴している。
橋本氏は、資本家階級からアンダークラスまでの階級構造が固定化しつつあると指摘する。学歴や家庭環境、配偶者との離死別、不登校、就職の遅れといった経験が階級をアンダークラスへの所属を決定づけ、アンダークラスの人々は低所得、社会的孤立、健康悪化、政治的無力感といった困難に直面する。そしてその結果、多くが次世代を生み育てなくなり、社会全体の持続性が危機に瀕している。
日本の未来に関心を持つすべての人に、本書を勧める。熟読し、現実を直視してほしい。

本書の要点

・近年、労働者階級の内部に大きな格差が生まれ、正規雇用の「正規労働者階級」と非正規雇用の「アンダークラス」に二分された。
・アンダークラスの出現と拡大によって、社会の持続可能性は著しく損なわれる。アンダークラスの賃金には子育てに必要な費用が織り込まれておらず、その結果、子を産み育てる人が少ないためだ。


・人がアンダークラスになる要因には、性別や学歴の他に、いじめにあった経験、最終学校の中退、不登校経験、就職の遅れ、配偶者との離死別などが挙げられる。本人に責任のない要因の積み重ねが、アンダークラスの困難の一部を形づくっているのだ。



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