レビュー
町から本屋が次々と姿を消していくのはなぜか──。本好きなら誰しも抱いたことのあるこの疑問に、『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』は徹底的に答えてくれる。
そもそも本屋は姿を「消して」きたわけではない。一店一店が、苦悩の末に力尽き、閉店へと追い込まれてきたのだ。著者が「つぶれる」という強い言葉をあえてタイトルに選んだのは、その重みを伝えるためだ。
本書は単なるノスタルジーではなく、書店の「戦後史」を緻密に描き出している。私たちが当たり前に受け入れている「本を定価で買う」仕組みは、出版社・取次・書店の三者による再販契約に基づくものだ。実はこの制度が、書店の経営を圧迫している一因だ。さらに返品条件付販売、雑誌優位の流通構造、見計らい配本といった業界独特の仕組みが、町の本屋を苦しめていった経緯も詳細に解説される。
書店が団結して交渉してきた「闘争の歴史」も見どころだ。取次への条件改善要求、公取委との攻防、大型書店や異業種参入との摩擦──本屋がただ淘汰されていったのではなく、「生き残ろうと戦ってきた」ことが本書を通して実感できる。そこに最後に立ちはだかるAmazonが、物流と効率化を武器に上陸後数年で覇者となる。この経緯はまるで経済ドラマのようだ。
本書を読むと、町の本屋がつぶれてきたのは、単なる時代の流れではなく、制度と流通の構造に深く根ざしていたことがわかる。
本書の要点
・日本の出版流通独特の、再販契約(いわゆる著作物再販制)や返品条件付き販売、見計らい配本といった仕組みが、町の本屋の経営を長期的に圧迫してきた。
・書店団体は運賃負担撤廃やマージン改善を求めて取次や出版社と交渉してきたが、公正取引委員会の介入により団結が弱まり、交渉力を失っていった。
・大型書店の進出とAmazonの効率的な物流システムによって、中小書店は急速に淘汰されていった。
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