文 足立真俊
写真 藤井隆弘
先週末に行われたプレミアリーグ第14節ニューカッスル戦で、2度のリードを守り切れず痛恨のドローに終わったマンチェスター・シティ。公式戦ここ5試合でわずか1勝(3分1敗)と調子が上がらないまま、1カ月で8試合を戦う試練の12月を迎えることになった。
「(シティに)やってきたペップは最初にこう言ってくれたんです。『私にとって食事はとても重要なんだ。栄養士のトムはいつもここにいてくれる。摂るべきものと摂るべきではないものを教えてくれるよ』と。おかげで栄養管理が私たちの文化として根づきました」
こう話すのは、スポーツ科学部門の一員であるトム・ペリーだ。トムはペップが監督に就任する前からシティで働いているスポーツ栄養士で、彼の指導の下セルヒオ・アグエロも食生活を改善したという。エースは当時の食事改革をこう回想する。
「ケガに悩まされ続ける中で、14-15シーズンから栄養管理に気を配り始めたんだ。例えばかつては赤肉を食べ過ぎていたけど、かなり減らすことにしたよ」

13-14シーズンは4度にわたるケガで16試合を欠場していたアグエロ
アグエロの母国アルゼンチンでは、牛肉などの消化されにくい赤肉を使った料理が盛んで夕食を摂る時間も遅い。そこでトムは消化・吸収されやすい鶏肉や魚肉に代替することを提案。
選手の汗まで分析する徹底ぶり
さらにトムはピッチ内の栄養管理も担当。特に選手が練習や試合中に行う「給水」には細心の注意を払っている。
「水分補給は基本です。ゲータレード(世界的に有名なスポーツ飲料)のスポーツ科学研究所と選手の汗を分析しています。(練習で)選手が失った水分量と塩分量を計測しているんです。水分や塩分をあまり失わない選手と、汗に塩分を多く含み水分を失いがちな選手では給水の必要性が大きく異なるんです」
一流選手でもそれぞれの体に合った水分補給を続けることは難しく、イルカイ・ギュンドアンも「給水が不十分だと、いつもの調子は出ない」と語る。だからトムは前述の分析を用いて改善が必要な選手を発見し、アドバイスを送っているのだ。一方試合では、プレーが止まった時に給水を呼びかけることはもちろん、貴重な休憩時間であるハーフタイムに選手一人ひとりに合わせた計画的な栄養補給を実施しているという。その理由を明かしたのは、スポーツ科学部門の責任者サム・エリスだ。
「選手たちに重要な情報を渡すペップが来る前に、彼らを落ち着かせ、心拍数を下げ、呼吸を穏やかにさせて回復と栄養補給に専念させます。
ペップや選手たちをピッチ内外で支えるスポーツ科学部門。トムやサムをはじめとする裏方も一丸となった「総力戦」で過密日程を乗り越え、苦境を脱することができるのか。国内3冠王者の復活劇に期待したいところだ。
https://youtu.be/HWKVpntq1Qo
Photo: Getty Images