「21世紀のロシア皇帝」と呼ばれるプーチン大統領が不穏な動きを強めている。通算5期目に突入以降、妙に性急なのだ。

ウクライナ北東部のハルキウを再び猛攻し、新たに複数の集落を制圧。内閣改造で盟友を隠居させるなど、新体制を敷いた。気分一新ではなかろうし、どんな思惑なのか。


 プーチンは12日(現地時間)、夏休みを一緒に過ごすほど親密な盟友のショイグ国防相を更迭。閑職の安全保障会議書記に追いやった。ウクライナ侵攻の長期化で国民的不信を買っていた上、反乱後に事故死した民間軍事会社ワグネル創始者のプリゴジン氏にミソクソに言われていた。

後任は第1副首相だった経済畑のベロウソフ氏の就任がほぼ確実。ペスコフ大統領報道官は「国防省は技術革新に対し、オープンでなければならない。軍需産業の競争力向上が求められている」とその狙いを説明している。


■背後に習近平


 筑波大名誉教授の中村逸郎氏(ロシア政治)は「ベロウソフ氏の国防相抜擢は、中国の習近平国家主席への配慮です」と言い、こう続ける。


「彼は『一帯一路』の窓口を担ってきたため、中国側とはある程度通じている。プーチン氏は5期目初の外遊として今月中に訪中する予定で、欧米に劣る軍需産業への支援を期待しています。

そうでなければ軍事のド素人をトップには据えません。安全保障会議は大統領の直属機関ではありますが、専属の官僚もいなければ、予算もつかない。メドベージェフ前大統領が副議長であることからも分かるように、姥捨て山のようなもの。退任したパトルシェフ前書記はKGB時代のプーチンの上司だったため、物申せたに過ぎない。次世代のリーダー候補に推す長男のドミトリー・パトルシェフ前農相を第1副首相に押し込めたので大満足でしょう」


 ロシアを潤わせてきた国営のガスプロムは、欧米主導の経済制裁のあおりで24年ぶりの赤字に転落。所有不動産の叩き売りを始めるほどピンチに陥っている。

軍需産業の最先端化に突破口を見いだすほかないというわけだ。


「国防相人事に対する制服組や前線の兵士らの反発は否めない。プーチン氏は愛国心をたきつけますが、その実は売国奴。自分が生き残るためには手段を選びません」(中村逸郎氏)


 何もかもが中国頼みでは、プーチンの落日はそう遠くなさそうだ。