3月20日に、公開された実写版映画「白雪姫」が、国内外で厳しい批判にさられている。


 今作は、主演女優としてコロンビア系米国人俳優のレイチェル・ゼグラー(23)を起用するも、「白雪姫のイメージと合わない」という原作ファンからの反発だけでなく、2022年に『Variety』のインタビューでゼクラーが発した「王子様に救われるのでもなく、真実の愛を夢見るのでもない。

リーダーになることを夢見ている」といった原作否定とも取れる発言にも批判が殺到した。


 そんな実写版「白雪姫」の北米での初週末興収は4300万ドル(約64億3000万円)で、ディズニーの実写リメイク作品としては史上最低の記録なっている。総製作費は2億7000万ドル(約403億円)とされており、回収するのも簡単ではなさそうだ。


 今作では、「雪のように白い肌」という意味で名付けられたという設定から、大雪の日に生まれたことが名付けの由来に変わり、白雪姫を救う王子は登場しない代わりに、盗賊を束ねる青年が王子的ポジションで登場するなど、リメイクにあたりいくつかの改変が行われている。これも原作へのリスペクトがないと酷評される要因となっているようだ。


 だが、実写版「白雪姫」が世界的に批判されている最大の要因は、「ディズニーらしい夢がないストーリー」と「女性の生き方の多様性を勘違いした描写」だと見る向きもある。


■「強く賢い」という見せ方をしながら最後はそそのかされて毒りんごをパクリ


「オリジナル版のように王子に守られるだけではなく、自立し、どこでもリーダーシップを発揮する強い女性という"新たな白雪姫像"の見せ方に、かなり力を入れたように感じます。ですが、王子には助けてもらわないが、小人には助けてもらうという矛盾もありながら、強く賢いという見せ方をしてきたにも関わらず、結局はそそのかされて毒りんごを食べてしまうので、リメイクの白雪姫はバカなのか賢いのか、白雪姫のキャラクターがブレ、感情移入できるポイントがなかった印象です」(映画関係者)


 またミュージカルパートが多い割に、現実的なセリフが多く、物語としてもファンタジーとして描きたいのか、現代的に描きたいのかが見えにくく、ディズニー本来の"夢のある物語"というポリシーが損なわれているようにも感じた。


「強く自立した白雪姫という新しい解釈を肯定的に捉えられるかによって、見た人の評価は変わるでしょう。白雪姫を強いリーダシップのある女性として描くために、ラブストーリーが主体ではなく、白雪姫VS魔女の話がメインとして描かれており、ここまで原作の白雪姫の否定する内容に大きく変えるのであれば、白雪姫をモチーフにし、現代的にアレンジを加えた別の作品にすれば、ここまでの世界的な酷評には結び付かなかったと考えられます」(同)


 確かに女性が社会進出をする現代の中で、オリジナル版「白雪姫」の王子様に幸せにしてもらうのを待つという姿勢は、前時代的だと感じてしまう人もいるだろう。だが男性に守られることを望む女性の生き方も尊重されるのが、正しい多様性のあり方といえるのではないだろうか?


 新たな解釈を強行するために、既存のものを捻じ曲げ、否定する行き過ぎたポリコレは、エゴにもなり得るリスクを伴うようだ。


(SALLiA/歌手、音楽家、仏像オタク二スト、ライター)


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 多様性が叫ばれて久しいが、制作者や表現者などに様々な混乱を引き起こしている。

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