【ラサール石井 東憤西笑】#248


 読んだ。


 フジテレビの一連のハラスメント問題に関しての第三者委員会の報告書である。


 400ページ近い報告書を読んだ感想は、かなり深いところまで踏み込み、よく書かれている。意図的に隠蔽したり、矮小化したりすることもなく、具体的に事実を述べ、ここに書かれていないハラスメントや女性接待もおそらく日常的、慣習的に行われていたであろう示唆に富んでいた。


 何より中居氏による性加害の事実の他に、類似事案や社内ハラスメントの事例が多数書かれ、雑誌に5大付録の付いた昭和の少年誌のようで読み応えがあった。


 元編成局幹部のB氏がどこにでも登場するのだが、彼は番組出演者U氏と中居氏のためにコロナ禍の中、ホテルのスイートルームを借り、連れて行った女子アナ2人を、他の社員とともに先に退出して置き去りにしてしまうのだ。


 社員たちは外で後片付けのために待機していて、その中の1人が女子アナの1人と常にLINEでやりとりしながら、危険があれば駆けつけるよう心配していた、というまともな人間もいたことも明記して、さながらドラマのような展開を見せる。


 さらに報告書は10年前にさかのぼり、B氏が今度はある芸能人と女子社員と個室で飲み、女子社員がトイレに行っている間に先に帰り、置き去りにされた女子社員は芸能人が下半身を露出してきたので逃げ出した事件を報告している。


 なぜ10年も前のことを書いたのか。それは暗に、そういったことをB氏が10年間以上続けてきたであろうことをにおわせているのではないか。


 さらに「プライムニュース イブニング」の反町キャスターにいたっては、2人の女性スタッフを個別に食事に誘い、セクハラの挙げ句、次のデートを断られると、重要なメールをわざと送らず激しく叱責したりのパワハラ三昧。絵に描いたようなクズっぷりを披露された。しかも、彼女たちの訴えは退けられ、反町氏は取締役にまで出世する。当時報道局長の石原氏や上司の岸本氏はヒアリングしたものの、これを隠蔽し記者会見では否定。

女子社員は飛ばされた。


 これなどまるで必殺シリーズの1話のようである。ドラマなら最後に岸本氏や石原氏は、針や琴の糸で殺され、反町氏は中村主水に斬られて終わりだ。


 フジテレビが元気な頃「ひょうきん族」でお世話になった。あの頃は確かにイケイケで時代も時代だったからムチャクチャしていた。あの頃の体質がまだそのままだとするなら、我々にも責任の一端はあるんだろうなあ。


 まるで王国のような日枝氏のワンマン体制にも触れていた。それで納得のいったことがある。


 ある芝居の宣伝でフジテレビのワイドショー取材を受けた。しかし「ラサールは政治的な発言をしているから出せないと上から言われた」と私を外して撮り直しになった。いや、スポンサーが嫌がってCMやドラマに出られないとかならそれは分かる。しかし、普通に芝居の宣伝がそんな理由で出られないなら、それは言論弾圧ではないか。

しかも他の政府擁護の発言をしているタレントは皆出ている。要は政府批判をしているから出せないってことだったのだろう。


 当時は誰か政府擁護のスタッフがいるのだろうと思っていたが、今回分かった。安倍元総理と仲の良かった日枝さんに対する忖度だったのだ。


 さて、もうフジテレビは生まれ変わるのだ。これからは、私にも芝居の宣伝させてくださいね。


(ラサール石井/タレント)


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