NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」は世帯視聴率ひとケタ台と低迷しているが、気丈で悲しい花魁・瀬川を演じる小芝風花が人気で、つい毎回見てしまう。


 そんな「べらぼう」本編より気になったのが、制作現場に密着したドキュメンタリー番組「100カメ」(3月28日放送)のコラボ特番である。

吉原の女郎屋や大門、仲ノ町通りを再現した大河史上最大級のセット、副調整室、衣装やかつらの支度場、メークブースなどに100台の小型カメラをセットして、出演者やスタッフら300人超の撮影時の様子を記録した。


 その日は、序盤の見せ場となる小芝の花魁道中の収録。つま先の向きや流し目などを細かく修正しながら、何度もテストを繰り返す。そのたびにスタッフが地面についた下駄の跡を掃き消し、ライトの位置を直す。おっさんの助監督が小芝の代役になってカメラワークを決める。沿道で見物する客や遊女、楼主・番頭や若い衆、食い物屋の小僧らの役者、エキストラらも100人以上いて、「ヨーイ、ハイ」の声とともに一斉に芝居をする。なかなか予定通りに進まず、ベテラン俳優がたった3秒のシーンのために控室で何時間も待たされている。


 ようやく「OK!」の声がかかって、みんながホッとしたのもつかの間、演出ディレクターが小芝の口元のアップを撮りたいと言い出し、「なんで今さら!」と大急ぎで小芝の口紅直しに走るメークチーフ。


 裏では弁当を配ったり、踊りの稽古が行われている。これらすべてを「100カメ」は写していく。


「人も時間もカネも思いっきりかけて、大河ドラマってここまでやるのかとあらためて驚かされましたが、その裏方の仕事も漏らさず記録していく『100カメ』はさらに凄いかもしれない」(テレビ情報誌編集デスク)


「100カメ」が今回の放送のために録画したのは2160時間、SDカードは180枚と膨大だが、オンエアは30分。使われた映像は全体のたった0.03%未満だという。


「100カメ」は2018年から不定期で月1回程度放送され、救急病院、競馬トレセン、街の美容室、福島第1原発などを取り上げてきた。100台のカメラをさまざまなところにセットするだけでも大変だが、その映像をすべてチェックして、使える部分を切り出すのに1カ月かかる。ただ、予算はあまりないようで、100台のカメラは中古品でそろえたという。応援したくなる番組だ。


 (コラムニスト・海原かみな)


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