【芸能界クロスロード】


 フジテレビの第三者委員会で性暴力が正式に認定された中居正広(52)。想定されていたことではあるが、改めてクローズアップされたのがフジと中居の密な関係だ。

両者の関係から浮かび上がるのが「忖度」の2文字。


 ジャニー喜多川氏の性加害問題ではジャニーズに対するテレビやメディアの忖度が指摘されていたが、今回の事件の根底にあるのは中居に対するフジ幹部の忖度する姿勢だ。


 被害女性から性被害の報告があった際、フジの幹部は中居に事実確認をすることなく、まず隠蔽を図るべく画策に走った。中居に弁護士を紹介するなど、中居を守ることを優先。元女子アナをないがしろにした。


 女子アナが欠けても補充できるが、中居の穴は埋められないと考えたのだろうが、中居の司会者としての実力は認めても、中居の代わりはいるし、必ず出てくるのがタレントの世界。松本人志がテレビから消えても困ることはなかったように、中居が番組に出なくとも支障を来すことはない。俳優や歌手には「あの人の演技が見たい。あの歌を聴きたい」と唯一無二の存在はいても、タレントにはそういない。司会に困ったら局アナがいる。


 フジの中居に対する忖度はさかのぼれば旧ジャニーズ事務所との付き合いから形成されていた。


 アイドル王国をつくり上げる過程でテレビを手中に収め忖度させるシステムを構築したのが事務所の副社長だった故・メリー喜多川氏。


 タレントに不都合があれば、「うちの子(タレント)は番組に出さないわよ。他のタレントも番組から降ろす」と迫り、思いのままにテレビ界を牛耳った。メディアに対しても厳命すれば従った。メリー氏の権力が頂点に達していた頃、こんな話も聞いた。


「日枝(久)氏と昵懇の仲だったメリー氏は“24時間、携帯に電話できる”と豪語していたそうです」(芸能関係者)


 日枝氏の下で働く人たちにとって、出世に影響する話である。暗黙のうちに「メリー氏を怒らせてはならない」とジャニーズに対して忖度が働く。


 そんな時代の真っただ中でトップアイドルとして君臨していたのが中居だ。14歳から33年にわたりジャニーズに所属していた中居が、メリー氏の力で忖度が働いていることを知らないはずもない。メリー氏が築き上げた忖度させるテレビマンを中居は当たり前のように引き継ぎ実行し、フジ幹部の中居に対する忖度は常態化した。


 元女子アナとのトラブルでも、中居は電話一本でフジが「なんとかしてくれる」と軽く考えていた節が調査報告からもわかる。女性がフジを退社すると「一段落ですね」というメールをしていたことまで報告書にあった。


 10代から芸能界に身を置いてきた中居。

「売れたら勝ち」とばかりに、近年のテレビからは驕りとも取れる言動が目に付いた。


 芸人や後輩タレントには上から目線でモノを言い、先輩や野球選手に対してはもみ手をするように平身低頭。あまりに極端な対応は違和感さえ覚えた。


 中居を育てたジャニー喜多川氏には少年たちへの性加害という裏の顔があった。東山紀之はこれを「鬼畜の所業」と言い放った。中居は忖度するフジに金銭面も含めすべてお膳立てさせ、女性に性暴力を働く裏の顔があった。


 引退してもダメージだけはずっとついて回る。


(二田一比古/ジャーナリスト)


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