【桧山珠美 あれもこれも言わせて】


 春ドラマがスタートした。トップを切ったのは「対岸の家事~これが、私の生きる道!~」(TBS系)。


 多部未華子演じる主人公は2歳の娘を持つ専業主婦。働くママが主流の時代、絶滅危惧種などと陰口を叩かれ、孤立感を強める。一方、江口のりこが演じるのは、2人を子育てしながら仕事もバリバリこなすワーキングママ。主婦に限らず、人は自分の選んだ道が正しかったと思いたいもの。それゆえ、自分とは異なる立場の人を容易に認めることはできないものだ。


 第1話ではひとくくりにしてしまいがちの子育てママだが、専業主婦とワーママの間に「深くて暗い河がある」ことがわかりやすく描かれた。そして対立構造になっていくのかと思ったら、ある出来事をきっかけに互いの思いを吐露し、わかりあえるようになる。


 ひと昔前なら互いに嫉妬したり、いがみ合ったりのドロドロ展開が多かったと思うが、令和のドラマにそんないざこざは無用。多様性の時代は、いかに相手を認められるかのスキルが必要だ。


 第2話ではディーン・フジオカ演じる厚労省のエリート官僚で2年間の育休中というパパ友もできるが、彼にもまた「専業主婦は贅沢だ」と論破されてしまう。多部の夫が一ノ瀬ワタル、江口の夫が元和牛の川西賢志郎、そして、ディーンの海外赴任中の妻を島袋寛子。妻に一緒に見ようと促されたら、それは育児に協力しない夫へのイエローカードかもしれない。



タイトルで卒倒しそうな「夫よ、死んでくれないか」

 次も夫が心穏やかではいられないドラマ。「夫よ、死んでくれないか」(テレビ東京系)という衝撃的なタイトルだけで、気の弱い夫なら卒倒するのではないだろうか。安達祐実、相武紗季、磯山さやかのトリプル主演。3人は大学時代の同級生で現在はディベロッパー勤務のバリキャリ、フリーライター、専業主婦となっている。3人の夫がいずれもタイプの違うクズ夫ときている。


 安達の夫・竹財輝之助はIT企業勤務で妻に無関心の不倫夫、相武の夫・高橋光臣は外資系コンサル会社勤務の束縛夫、磯山の夫・塚本高史は電機メーカー勤務で、専業主婦の妻に「誰の金で食えてるのか」と言うようなモラハラ夫。まさにクズ夫のカタログのようなドラマだ。


〈親友3人組、人生のリスタート。共通の障壁は「夫」…。「幸せ」を求め、手段を選ばず奮闘する。女性共感度120%のマリッジサスペンスドラマ〉。全夫に激震が走ることは間違いない。


 最後は栗山千明主演の「彼女がそれも愛と呼ぶなら」(日本テレビ系)。栗山1人に対し、恋人は3人。


 複数恋愛をテーマにしたラブストーリーで、イケメン3人と仲よく暮らす栗山は女たちの理想の姿かも。


 まだまだ始まったばかり。今期は男性には試練を与えるものが多い。


(桧山珠美/コラムニスト)


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