今田美桜(28)主演のNHK連続テレビ小説「あんぱん」の初週平均視聴率は15.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)。
前作、橋本環奈(26)主演の「おむすび」は16.1%、前々作の伊藤沙莉(30)主演の「虎に翼」は16.2%だったから、約1ポイント下げたスタートになり、NHK制作サイドはさぞかし肩を落としていると思いきや、局幹部は全く意に介さず、逆にホクホク顔だという。
個人視聴率とは、世帯家族内の4歳以上の性、年齢、職業別の視聴率のこと。この個人視聴率の初週平均が、この週にオンエアされたドラマでは断トツの8.6%を記録。また放送後1週間内であればPCやスマホでいつでも見られるNHKプラスでは、初回放送が、朝ドラと大河ドラマにおいて歴代最高となる76.1万UB(ユニーク・ブラウザー)を記録した。「おむすび」の初回視聴数は46.1万UBだったから、NHK幹部がご機嫌なのにも納得がいく。
「NHK前会長の前田晃伸氏が在任中、朝ドラ現場スタッフに視聴者の若返りを指示したことが、着実に実を結んできたのでしょう。家族揃ってテレビを見る時代が終焉を迎えていることは、NHKプラスの記録更新が裏付けています。逆に時間枠や場所に関係なく、個人の好きな時に見られるようになったことで、朝ドラが日常生活の中に深く入り込んでいると言い換えられるのではないでしょうか」(テレビ関係者)
■「花子とアン」を担当した中園ミホ氏の脚本
では、「おむすび」で朝ドラから離れた視聴者を引き戻した「あんぱん」の魅力は何なのか。テレビ関係者が口を揃えるのは、2014年度前期の同じく朝ドラ「花子とアン」を担当した脚本家、中園ミホ氏(65)の健筆だ。
「1話15分弱の限られた時間に必ず視聴者の心をワシ掴みにする感動シーンを入れてくる。親子の絆や夫婦の無償の愛が、押しつけがましくなく、物語の中にちりばめられている脚本は、中園さんみたいな朝ドラ経験者でなければ書けない技というのが共通認識になっています」(ドラマ制作関係者)
また、前田前会長が何としても取り込みたかった若年層の視聴習慣も大きく影響しているという。
「個人視聴率の追い風となっているのは20~34歳の女性、つまりF1層といわれている人々です。F1層は、仕事の空き時間や休憩時間、出勤や帰宅途中の電車の中でドラマを見ています。今田と北村匠海(27)という好感度の高いキャスティングも興味深く、物語的にも“見ていて疲れない”とか“気分転換になる”という感想も、視聴のモチベーションになっていると理解できます」(前出のドラマ制作関係者)
またこの視聴動機について、別の視点を指摘するテレビ関係者もいる。
「F1層が数字を伸ばしているのは把握していますが、それに加え、幼い頃に『アンパンマン』を見て育ったというF2層(35~49歳の女性)やM2層(同歳、男性)が熱心に見ていることも見逃せません。自身の子供時代も、そして自分の子供とも『アンパンマン』を一緒に見ながら子育てをしたという世代は、朝ドラの好き嫌いの前に、若かりし頃の感情が『アンパンマン』とともに蘇ってくる……というわけです」と話す。
涙を誘う子役の一生懸命な演技に加え、これからは今田、北村、河合優実(24)、妻夫木聡(44)、そして若年層に大人気のMrs.GREEN APPLEの大森元貴(28)も登場する。
「あんぱん」がどこまで数字を伸ばすことができるのか見ものだ。
(芋澤貞雄/芸能ジャーナリスト)