【死ぬまでにやりたいこれだけのこと】


 馬場裕之さん
 (お笑いトリオ「ロバート」/46歳)


  ◇  ◇  ◇


 秋山竜次、馬場裕之、山本博のお笑いトリオ「ロバート」。個性的な3人組はそれぞれに持ち味、特技が異なる。

馬場さんは飲食店を手がけるなど料理芸人としても知られ、YouTubeチャンネル「馬場ごはん」は登録者126万人。2月には初のレシピ本も発売された。馬場さんにこれからやりたいことを聞いた。


■3年前に宮古島で冷麺の店を始める


 宮古島の魅力にハマって3年前にお店を始めました。冷麺の店です。宮古島は観光の島で全国各地からお客さんがやってきます。観光客の中にはそば粉や小麦のアレルギーの人もいるので、米粉を使ったグルテンフリー冷麺を出しています。具は宮古の食材をたっぷり使い、海ぶどう山盛りです。手間もかかるし、米粉などの輸送費もバカにならないけど、そこはこだわってやってます。


 最初にハマったのは沖縄本島です。でも、宮古島に初めて行った時に沖縄とは「全然違うな」と衝撃を受けました。宮古島の気候は東南アジアに近くて、本島でとれる野菜や果物とは種類がまるで違う。

グアバが実ってたりライチやリュウガンもあって南国らしい。雨が降っても傘はささなくていいし、すぐ晴れて濡れてもすぐ乾く。


 宮古島に行ってみようとか、住んでみようかと思ったのも理由があって実際に行って住んでみないとその魅力とか、逆に不便さとか分かりませんからね。


 宮古島はどこに行っても海がメチャクチャきれいです。山がないから土が流れ込まなくて海の透明度がすごいし、海にはビーチエントリーで入れる。日本にはこういうところはあまりありませんね。


 ただ、冷麺の店は誤算でしたね。最初は「うまくいくかも」と思ったけど、宮古島は冬は気温が低く、10度を下回ることもあります。そうなると冷麺がまったく売れません(笑)。冬になると観光客も減るし。フランチャイズ化もできると思っていたのは甘かったですね。フランチャイズ化は「無理」と諦めました。



寒くなったらタイで暮らす

 宮古島以外で好きな場所は「アナザースカイ」(日本テレビ系)のロケで行ったタイのナーン県です。メチャメチャ田舎っぽい雰囲気がすごくよかった。飼ってる鶏をしめて食べるのを見て昔の日本もこうだったんだろうなと思いました。食べ物も僕に合いましたね。住みたいと思う場所はだいたい「食」から入ってる気がします。沖縄ならゴーヤーチャンプルーも沖縄そばも飽きなかったし、タイではタイ料理もナンプラーの使い方が好きで気づいたらどっぷりハマってました。宮古島が寒くなったらタイで過ごすとか、そんな暮らしができたらいいですね。


 それからいつか中国の田舎にも行ってみたいです。中国の場合はベタな中華料理じゃなくて、食の起源を感じるような田舎の素朴な料理がいいですね。


 僕はゲテモノ系もいけます。タイでは水牛の皮も食べたし、タガメの塩辛もおいしかった。ソムタムにカニの塩漬けが入ってるのを現地で食べたら「肝炎になるかも」と言われたけど、気にせず食べました(笑)。

韓国では牛の血の塊入りスープも飲みましたし、沖縄の血イリチーも平気です。どんな食材でも、食べることで新しいレシピのヒントになるんですよね。


■とれたての野菜のおいしさに触れて育った


 うちのおばあちゃんも母も料理が好きで、新鮮な野菜を食べたいから畑もやっていました。小さい頃から、とれたての野菜のおいしさに触れて育ったんです。


 お吸い物を作る時は裏庭のミツバを摘んできて入れたし、そうめんの薬味にはミョウガが欠かせなかった。ノビルもとったし、グミの実もよく食べました。要するに、自分でとったものを食べるのが好きだったんですかね。裏庭でとれた大葉と買ってきた大葉を食べ比べて「こっちの方が香りがいい」なんて食べ物のおいしさを自然と学んだ気がします。


 魚はおじいちゃんが釣ってきてくれて鯛なんかは「目玉から食べろ」と言われて(笑)。頬の肉が筋肉質でうまくて、身よりそっちを率先して食べてました。


 珍味系でいうと、以前のレシピ本には塩辛の作り方も載せました。ちゃんとイカの肝で作るものです。

昔、イカの肝がしっかり入った塩辛を食べた時のおいしさがずっと記憶に残ってるんですよね。ただ、残念なのは珍味系はYouTubeに向いてないこと。やっぱり万人受けするものでないと再生回数が伸びにくいんですよ。


 自給自足も苦じゃないんで、田舎でやってみたいですね。農業も体力のあるうちに一回やってみて、無理になったら東京に戻ってくるのもアリかなと。実家は九州にあるので選択肢として考えてます。



家事も洗濯も苦じゃない。事実婚でいい

 こうして考えてみるとやっぱり一度は移住してみたいですね。きょうだいはみんな結婚して家庭を持って、母親孝行もしてくれてるんで、僕は好きなことをやって自分の人生を楽しもうかな。


 結婚願望もないし、そもそも結婚という形にこだわりもない。事実婚でいいじゃないですか。だいたい結婚したら自由がなくなるでしょ。

移住だって、家族みんなで行かなきゃいけなくなるし(笑)。


 料理もできるし、家事もまったく苦じゃないですしね。洗濯も面倒だと思わない。昨日も結構飲んで帰ったけど、夜のうちに洗濯機をすすぎまで回して、朝起きて脱水して干して、風呂入って生放送の仕事をしてきました(笑)。


 出かける時はルンバを遠隔操作して掃除。帰りに食材を買って、お酒に合うつまみを作って、飲んで一日を終える。それがすごく楽しい。今回の本でもおつまみをいろいろ紹介してますけど、お酒が飲めないと、つまみ系のアイデアって出てこないと思います(笑)。


 YouTubeでは誰でも買える食材で、簡単な工程でもおいしく作れるように心がけてます。宮古島のお店ではこれからもできるだけこだわって、オリジナルなものを出したいと思ってます。僕、お笑いのネタよりレシピの方が思いつくタイプなんですよね(笑)。


 登録者126万人なんて十分すぎるくらい。

最初はコロナ禍で「やることないし、やってみますか」って軽いノリで始めたんです。それがここまで続いたのは、プロデューサーや制作スタッフさんのおかげです。サムネイルも自分では作ってないし、レシピ本の企画は事務所が全部仕切ってくれました。支えてくれる人がいたからこそ、ここまで来られました。


 全国の生産地を巡るロケ番組もやっていたので「鮮度が違うとこんなに味が変わるんだ」と、仕事で食材の勉強をさせてもらいました。


 芸人じゃなかったらそういう仕事も来なかったと思うし、好きな料理で経験を積ませてもらえてありがたいです。何より見てくれている視聴者の皆さんのおかげ。僕にとって料理は日常なんで、それをやっているだけで、こんなに注目してもらえるなんてなかなかないことです。本当に皆さんに感謝しかありません。


(聞き手=浦上優)


▽ばば・ひろゆき 1979年3月生まれ、北九州市出身。お笑いトリオ「ロバート」のメンバー、ボケ担当。近年は料理芸人として注目を集め、冷麺専門店など飲食店の経営も手がける。YouTubeチャンネル「馬場ごはん」は登録者126万人を超えた(4月2日現在)。今年2月、初のレシピ本「馬場ごはんベストレシピ ロバート馬場のばばっと作れて一生うまい!」(Gakken)を刊行。チャンネルを開設した2020年から約5年にわたって公開してきたレシピ動画から厳選したものを紹介している。


編集部おすすめ