【あの人は今こうしている】


 池谷直樹さん
 (元体操選手・タレント/51歳)


  ◇  ◇  ◇


 スポーツバラエティー番組「筋肉番付」シリーズはTBSの名物企画。そのひとつ「最強の男は誰だ!壮絶筋肉バトル!!スポーツマンNo.1決定戦」で繰り広げられた、元体操選手の池谷直樹さんとケイン・コスギのモンスターボックス(跳び箱)対決には熱くなったものだ。

池谷さん、今どうしているのか。


 池谷さんに会ったのは、神奈川県は川井本町。相鉄線鶴ケ峰駅から車で約15分、池谷さんが社長を務める「株式会社サムライ・ロック・オーケストラ」の事務所兼稽古場だ。


「サムライ・ロック・オーケストラ(SRO)という、日本版シルク・ドゥ・ソレイユのようなアクロバットなショーを、2012年から制作・興行しています。渋谷に事務所を構え、あちこちの稽古場を借りてやってきたのですが、それも大変なので、5年前、ここ1カ所にまとめたんです」


 池谷さん、まずはこう言った。


「SROは、それまで約10年間僕が出演していた『マッスルミュージカル』の発展形。『マッスル──』は東日本大震災がきっかけで運営会社が倒産してしまったので、一緒にやっていた仲間たちを何とかしなくてはいけない、との思いでSROを旗揚げしました。今は2年に1本新作を制作し、全国を回っています。僕が実際に演出からスポンサー探し、チケット営業までやっています」


「㈱SRO」は社員3人含め、従業員は25人。



3人の息子は騎手、早大生、青学大生と優秀

「ここは『池谷直樹体操教室』でもあって、3歳から中学生の100人ほどに教えています。あと、最寄りの二俣川駅の駅ビルに『跳びたこ焼き』というたこ焼き店やキッチンカーも経営してますから、自宅と往復する時間がもったいなくて、週3日この事務所に寝泊まりし、食事は1日1食……食べない日も。やることがいっぱいあって、1分1秒が惜しいんです」


 どうりで、ほっそりとしているわけだ。


「体重は大学時代から変わりません。お酒が飲めないのもあって、太らない。飲む席には仕事上必要があって出席しますが、それからまた事務所に戻って仕事しています。息抜き? たま~に、知り合いの社長さんらとやる麻雀かな(笑)」


 家族から不満の声は上がらないのか。池谷さんは2001年、元新体操選手と結婚。現在、地方競馬の騎手になった長男・匠翔さんをはじめ3人の息子がいる。


「嫁は型にはまった考え方をする人じゃない。僕の仕事にも理解があります。いえ、ここを手伝ってはいません。新体操やヨガの指導をしています。次男は早稲田大学の学生ですが、今はイタリア留学中。将来は起業家になりたいみたいですね。

三男はこの春、青山学院大学1年生に。両親が苦労しているのを見てたからか、3人とも早くから自分はどう生きていくか、考えてたみたいですね」



「ケインに跳び箱を指導したのは僕」

 実は、SROを立ち上げたはいいが、最初は出資者に騙され多額の借金を背負ったのだ。


「今も少しずつ返していますよ。でも、まだ残っている。エンタメは一発当たれば大きいけど、それまで地道にがんばっていくしかありません」


 稽古場では、20人弱の所属スポーツタレントらが、この4月20日、「綾瀬市オーエンス文化会館」(神奈川県)で幕を開ける公演「マッスルサーカス おもちゃの大冒険」の稽古で汗を流している。体操やバトントワリングなど世界レベルのタレントが多く、稽古を見るだけでもワクワクする。


「彼らの能力はスゴイでしょ。それでも、社会に出たら、それまで積み上げたものを生かして稼ぐ道はほとんどない。彼らのセカンドキャリアの受け皿になりたい。ここで最初は演者でも、ゆくゆくはショービジネスのノウハウを身につけ、羽ばたいていってほしいですね」


 さて、静岡県生まれ、大阪市育ちの池谷さんは、兄・幸雄さんの影響で小学校1年生のときに体操を始め、国内トップ選手として活躍。23歳で現役引退後は芸能界へ。99年、「スポーツマンNo.1決定戦」で23段の跳び箱を跳び世界記録を打ち立てるなどして優勝。

その後もケイン・コスギと競い、視聴者を楽しませた。


「ケインに跳び箱を指導したのは僕。今もTBSのスポーツ番組の跳び箱の指導は続けています。僕は今は……15段なら跳べるかな(笑)」


(取材・文=中野裕子)


▽池谷直樹(いけたに・なおき) 1973年12月静岡県出身、2歳から大阪で育つ。兄は五輪メダリストの池谷幸雄。清風高校、日体大卒。体操競技を引退後は芸能界へ。スポーツタレントとしてTBS「スポーツマンNo.1決定戦」などで人気を博す。


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