【死ぬまでにやりたいこれだけのこと】


「とろサーモン」久保田かずのぶさん(45)


 2017年のM-1チャンピオン、とろサーモンの久保田かずのぶさんはつねに話題を振りまく注目の芸人だ。先月出した新刊「慟哭の冠」もありのままをさらけ出して衝撃的。

これからを語ってくれた。


  ◇  ◇  ◇


  2月に飛び出したオンラインカジノのスキャンダルでは久保田さんの名前も取り沙汰された。これについては本人が自身のラジオで関与を否定。とんだとばっちりだった。


 新刊「慟哭の冠」はこのタイミングで偶然の出版になりました。これって運がいいのか悪いのか(笑)。出版していいか不安になったので、何度も考え直したり、読み直したりしてみました。


 その中でこの本の中に答えが載っているなと気がついた。226ページのあとがきです。「目に見えるものより、目に見えないものを大事にしてください」。これが僕からのメッセージです。


 僕が芸人を目指し、M-1で優勝したわけですが、どう生きてきたか、生きざまをありのままをさらけ出したのが「慟哭の冠」です。

この本はこんなふうに読んでほしいですね。


 もしあなたが今、生きていてつらいとか、頭を抱えている問題があるとしたら、それはとても小さなものだということ。僕もいろんな問題と格闘しながら生きてきて、路地裏に駆けこんで死のうかと思ったこともあります。でも、そこで生活している人、生きている人たちがいた。それを見てやっぱり死ぬのは違うよな、自分は生きていることに怯えていただけじゃないかと考えるようになりました。そういう人を見ているうちに、自分より大変な人がいることもわかった。独りよがりはよくない、やめようと。そんなことを書いています。


 もし、このインタビューが記事になり、ネットで読まれたとして、コメントを書く人もいるじゃないですか。その時は久保田だから、好き勝手書けばいいとか思わず、ぜひ、誰かに伝えるすてきな言葉を書いて欲しいと思います。


 インタビューのテーマはこれからやりたいことですよね。


 今はリアルにこういう番組を持ちたいとか、あの芸人と絡みたいとかということはないですね。

それより今日、メッチャ面白かった、楽しい仕事だったと思える日がたくさんあればいいなと思っています。そのためには嫌な仕事は断って、好きなことだけ夢中になってやりたい、力を注いでいきたい。


 YouTubeをやったり、3年前に絵を描くようになって個展も開きました。個展では100万円で絵が売れて衝撃的でした。ただ、また個展をやりたいとか具体的なことは何も考えてません。


 そういう本を出したとか、絵を描いた、または久保田が炎上した……といったトピックスが今からもいくつもあると思います。これをこれからどういうふうにしていくか、考えていくしかないです。


 芸人としては、例えば地方を回って漫才にライブをやっている同期や後輩がいます。でも、同じプロ野球選手でも打席に立ったら打ち方が違うように、僕は彼らと全然、違う。それが楽しいと思える人とそうじゃない人がいるとしたら、僕は楽しいとは思えない。その上でやりたいことは、ネタが飽きないように単独ライブを年1回やる。1回しかやらない。

面白いネタを10本、20本作って楽しく演じようと思っています。ただ、それを死ぬまでやっていこうとも思っていない。やっぱりみんなつねに何か新しいものを見つけたいんですよ。今やってること、すごいやろ、僕、これやってんねんと言いたいんです。承認欲求ですわ。


 旅して回るのもいいと思います。ただ、間違えないでほしいのは、そもそもどういうつもりでこの世界に入ってきたかということです。ほとんどの人はテレビに出たくて入ったと思うんです。でも、年を取るとテレビは無理かも、そうなった時に他に何かできることがないか、みんなも地方を営業で回ってると思うんです、それでいいわと。冷たい言い方かもしれないけど、ヒット打てんかったらバントしてみようかなということでしょ。


 僕はそこは変わってなくて、テレビは死ぬまで出たいし、志は下げたくないということです。



元妻から「ちょっと会える?」と電話が…

 やりたいことを聞かれて、いくつかあるかもしれないけど、答えはひとつですわ。

楽しいことをやりたい。例えば、一番好きな女性のタイプを聞かれたら、僕は大きい声でオッパイが大きいコと言います。2番目を聞かれても同じ、3番目は? じゃ、面白いコかなと言ったとして、面白いコはどんな見た目してる? と聞かれたら、やっぱりオッパイが大きいコなんですよ。何回聞かれても答えはひとつで、変わらないということです。


  著書には元妻がテーブルの上に離婚届を置いて荷物をまとめ、犬と一緒に出て行った話が出てくる。「妻とはこの日から一度も連絡が取れず会っていない」とある……。


 その後はマジで一度も会ってません。ただ、本当は17年にM-1で優勝して1、2年経った時に連絡がありました。「かずちゃん、東京に行くからちょっと会える? ご飯でも」と電話してきたけど、断りました。


 僕が全部悪いし、あの残酷な人生の一ページをもう一度思い出したくなかったし、申し訳なさと懺悔の気持ちがあったので。会うことでまた当時のことが蘇ることになるのは……。罪ぐらい重いことだと思います。


 連絡は何回かありましたけど、全部、断りました。今はどうか幸せでいてほしいと心から祈ってます。


■夏になったらナダルとブラックバス釣り


 お笑いコンビ「コロコロチキチキペッパーズ」のナダルとは一緒にブラックバス釣りに出かける。ブラックバス釣りができるのは夏だけなんです。ブラックバスは川の魚の中で一番嫌われている魚で、芸能界のブラックバスみたいなナダルと久保田が好きというのも(笑)……。


 最初は僕がM-1で優勝した翌年に炎上した時ですね。誘ってくれたのがナダルで、「兄さん、魚釣りは面白いです、ストレス解消になります。一緒に行きましょう」と言って車を出してくれた。


 僕は全身グッチのオシャレな服を着て出かけました。魚を釣る人でそんなん着て行く人おらんですわ。


 朝から晩までやっても、釣れなくて。その頃はいろいろ叩かれて脳もぶっ飛んでいて、気がついたら川に首の下まで漬かって、顔だけ出して釣りをやっとった。

本当ですよ。真夏で暑いから気持ちいいし、濡れてもシャツはすぐに乾くし。


 川につり橋がかかっていたんですけど、そこから僕を見ていた老人が自殺願望者と思って通報したみたいで。警察がやってきました。懐かしいですわ。


 夏になったらナダルとまた出かけます。


■今のマンションからどこかに引っ越したい


 実は今、住んでいるマンションはマスコミにバレてるから、引っ越したいんですわ。近くに開かずの踏切があり、撮り鉄のたまり場みたいになっていて、全員、長いカメラを持っている。間違いなく、そこに紛れ込んだマスコミに撮られていると思います。そこのマンションは管理組合の役員は輪番制で、僕が理事長をやってるんです。でも、いいところがあれば引っ越したい。


 例えば、湘南? または茨城とかいいじゃないですか。1カ所ではなくて、家賃が10万円くらいの部屋を3部屋か4部屋持ちたい。


 どこに住んでいるのかわからないみたいなのもいいかな。それなら無敵ですわ。


■100歳まで長生きしたい


 僕の人生は人ともめたり、濡れ衣を着せられたり。人生のターニングポイントでこれまで結構ありました。


 70歳くらいで死ぬのかなと思う時もあるし、体が動くなら90歳、100歳まで長生きしたいと思うこともある。でも、90歳まで生きたらやることがないでしょうね。時間しかない、仕事がないという中で。ジジイになってやることがなくても楽しみを見つけます。


(聞き手=峯田淳)


編集部おすすめ