「中居=フジテレビ問題」の収束は訪れるのか。
フジテレビの親会社であるフジ・メディアHDの大株主である米投資ファンド“物言う株主”ダルトン・インベストメンツ社は先週、社外取締役12人を提案した書面をフジテレビ側に送付した。
提案された社外取締役には、SBIホールディングス会長兼社長の北尾吉孝氏、ワーナーミュージック・ジャパン会長の北谷賢司氏、「フォーサイト」元編集長の堤伸輔氏のほか、STARTO ENTERTAINMENT社長の福田淳氏も名を連ねている。6月開催の株主総会で株主提案する予定だという。
ダルトンに指名された北尾吉孝氏が4月17日に記者会見し、「自分が取締役会長に就くことは可能」と就任に意欲を見せ、「清水(賢治=現社長)さんは残したほうがいいと思っている」とも話した。
日本テレビ編成部に在籍し、大和大学社会学部教授兼関東学院大学経営学部客員教授で、メディア文化に詳しい岡田五知信氏はこう話す。
「現在のフジテレビは、株主などのステークホルダー、スポンサー、そして視聴者……切り離すことができないこの3つからの信頼回復が同時に問われている状態です。フジは聞こえのいい改革案を提示しましたが、社内アンケートで約4割の社員がセクハラやパワハラの経験があると回答した中、そうした常軌を逸した企業体質が一朝一夕に改善できるのか、“絵に描いた餅”ではなく、実際にそれを実行できるのかが問われているわけです」
スポンサーはいまだに戻らず、「Live News イット!」の青井実アナのパワハラ疑惑が噴出し、同時に女性アナウンサーの退職も相次ぐなど、出口の見えない混迷が続くフジテレビ。その一方で現在、同局の株価は上昇している。その理由について岡田氏が続ける。
「理由は2つあって、1つは日枝体制からの脱却を機にフジテレビは生まれ変われるのではないかという期待感。もう1つはやはり、なんだかんだ言っても高度なコンテンツ制作能力、そしてIPなどの知的財産権を有していることです。ですから、フジテレビ再生のためには、もう一度、モノづくりの原点に立ち返ることが最も重要でしょう。それが地上波なのか、配信なのか、どういうコンテンツになっていくのかはわかりませんが、そこが会社としての信頼回復に向かう一番のポイントになってくるのではないかと思います」
ダルトンは社外取締役提案と同時に、日枝久氏の退任を機にガバナンスの刷新と事業の再構築が必要だと訴え、「ガバナンス改革」、「不動産事業のスピンオフ」、「政策保有株の解消」「フジテレビの事業改革」の4点を提案している。
「今までのように、不動産事業にあぐらをかくのではなく、いかに愚直に、新しい世代の才能を育て、面白いコンテンツを作っていけるかが、フジテレビ復活の一丁目一番地になってくると思います」(前出の岡田氏)
予断の許されない状況が続くフジテレビだが、“明日のために”ものづくりに原点回帰する必要があると言えそうだ。
◇ ◇ ◇
収束の見えないこの問題。その根底にあったものは……【関連記事】容姿優先、女子アナ上納、セクハラ蔓延…フジテレビはメディアではなく、まるでキャバクラ状態なども必読だ。