【お笑い界 偉人・奇人・変人伝】#240
いとうまい子
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この春から「情報経営イノベーション専門職大学」の教授に就任された、いとうまい子さん。最初の講義で「性接待を求められて断ったら次の日の仕事がなくなった」と赤裸々に告白されて話題になっていました。
まだ「伊藤麻衣子」さん時代に半年間、関西の番組でご一緒しました。当時すでに30代後半のはずですが、まるで“ぬいぐるみ”のような可愛らしい印象でした。
笑顔を絶やさず物腰も柔らかい方でしたが、仕事を進めていくうちに「それは無理です」「大丈夫です。やります」と、イエス・ノーをハッキリ言われる方で、非常に仕事のやりやすいタレントさんだとわかりました。延べ1000人を超えるさまざまなジャンルの方にお会いしましたが、一時期の人気で終わらず、芸能界で生き残る方はみなさん時流に流されることなく、自分の意思・意見をキッチリと持っている人だと思います。
大御所芸人さんがいとうさんに「なんか困ったことあったらなんでも言いや」と、いつも優しく接してくださるのを、下心かと心配され、いとうさんは共演者の中堅芸人さんに「どういう方なんでしょうか?」と相談されたことがありました。笑いながら「ないです、ないです。あの人は誰にでも優しい人やから、そんな心配一切いりません。『外車が欲しい』とか言うてみて。『よっしゃよっしゃ! ……買えるかえ!』てちゃんとツッコんでくれはるから。そういう人。コミュニケーション!」と返され杞憂に終わりました。
正面から先輩に尋ねるストレートさもありながら、そんなことも心配するんだなと不思議に思っていたのですが、今回の告白を聞いて「そういうことが実際にあったからなんだ」と二十数年の時を経て話がつながりました。そこで売れるためにと性接待に応じてしまったら、なし崩し的に続くかもしれないし、メンタルを病むかもしれません。いとうさんはそういう危険と紙一重な場所でも毅然として断ってきたから、今も凜として咲いていらっしゃるのではないでしょうか。
今回の大学教授就任をはじめ、女優、タレント、ロボットの研究等々、いくつもの顔を持っておられるいとうさん。ぜひ学生たちにご自身の凜とした生き方を教えていただきたいと思います。
(本多正識/漫才作家)