【今週グサッときた名言珍言】
「言おうと思って頑張った気もするけど、やっぱ体重乗ってないよなあって力も出ない」
(山根良顕/テレビ朝日系「アメトーーク!」4月17日放送)
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アンガールズといえば、田中卓志(49)の活躍が目立つ。コンビそろって全国ネットの地上波番組に出演することは、近年ではあまりなく、相方の山根良顕(48)の印象はやや薄い。
例えば、こんなやりとりに山根らしさが凝縮されている。田中が「山根が積極的にボケてるところ、見たことあります?」と問いかけたときだ。山根は「急に積極的なボケすると、みんなびっくりしちゃうんですよね」と言う。自分本来のボケと、アンガールズのネタで見せるボケのテイストが違うため、周りが戸惑ってしまうというのだ。
「山根のボケって半分自分の心にあることしか言わない」「明らかなウソみたいなボケは山根は得意じゃない」と田中は分析。共演者に「言おうと思ったことはあるのか?」と問われ、山根が返した答えが今週の言葉だ。テレビに“合わせる”ようなことを、山根はしない。
一方で、田中が書くネタには、絶大な信頼を寄せ、言われたとおりに演じる。以前「相方から言われた一番うれしかった言葉」を聞かれ、「山根はなんでも言うこと聞くからやりやすい」という言葉をあげていた(テレビ東京系「ゴッドタン」2023年9月23日)。一見すればバカにしているとも取れる発言。だが、山根は「居心地いいからしょうがない」と受け止める。
そんな山根に田中は「素の山根でいけるために(テレビで)1回ウソをつけって言ってんのよ。じゃないと、本来の自分が出せないまま終わっていっちゃうから」(テレビ東京系「あちこちオードリー」23年12月6日)と諭すが、山根はこう反論していた。
「本来の自分を出してるから、テレビに出てないのよ。本来の自分を出してないやつがテレビに出てんだから」(同前)
山根は、本来の自分が出せないのであれば、無理にテレビに出たいと思っていないのだ。
田中が「情熱大陸」(TBS系)に密着されていた際も、コンビではなく、田中1人であることをライブの共演者にツッコまれても泰然とし「オファーもかかってないけど、出たくないのよ、俺」と笑っていた(TBS系「情熱大陸」25年2月2日)。
山根は常に居心地の良さを求めている。こういう男がひとたび受け入れられると、無敵だ。
(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)