「ケチだからクリーン」はやはり幻想だったようだ。石破首相をめぐる政治とカネの問題が噴き出した。

闇献金疑惑だ。少数与党の石破政権は万事休す。野党にしてみれば、倒閣の好機到来のはずだが、第1党の立憲民主党の野田佳彦代表は鈍臭い。「参院選後」をにらんだ思惑が透けて見えるのである。


 石破首相の闇献金疑惑を報じたのは週刊文春(5月15日号)。〈元側近が爆弾証言 石破茂首相への闇献金3千万円を告発する〉とのタイトルで、石破の地元・鳥取と縁がある実業家が父子で支援した経緯を告発している。それによると、父親が新人議員だった石破氏を気に入り、1990年代後半から政治資金パーティー券を購入。購入額は次第に膨らみ、2003年から14年までの間、多い年は600万円分に及んだ。石破氏の政治団体の代表も務めた実業家は自民党総裁選では随行員として支え、陣中見舞いとして100万円を差し入れしたほか、出世するたびに祝儀を渡したという。「3000万円」は石破氏側に渡ったおおよその総額なのだが、政治資金収支報告書への記載は一切ない。


 パーティー1回につき同一の者から20万円を超える支払いがあった場合、収支報告書に氏名や金額を記載する義務がある。文春砲の内容が事実であれば、政治資金規正法に反する不記載。

カネのやりとりそのものを隠していれば、裏金化も同然。より悪質な虚偽記載に問われる。石破首相はようやく8日、「秘書にも確認したが、まったくそのような事実はない」と釈明したが、うのみにはできない。


 金権腐敗の温床である企業・団体献金の禁止をめぐっては、自民党の猛反発でたなざらし。3月末に結論を出すとした与野党合意は反故にされた。およそ30年前に吹き荒れた「平成の政治改革」の旗手を気取りながら、石破首相が棚上げされたままの企業献金禁止を拒むのは、同じ穴のムジナゆえだったのだろう。



共通するのは「玉木嫌悪」

 衆院1期生への商品券配布に闇献金。裏金事件で壊滅寸前だった自民の「最終兵器」の石破までダーティーとくれば、お引き取り願うしかない。しかし、この攻め時に野党の反応は鈍い。


 立憲の野田代表は「商品券配布問題も含めて政治倫理審査会に自身が進んで出席し、きちんと弁明することが大事だ。これから本格的に行われる政治資金規正法の議論にも影響が出てくる」とド正論。しかし、内閣不信任決議案の提出については、「よく精査して、きちんと弁明や説明を聞くという手順を踏みながら、当然そのような判断も出てくる可能性もある」とお茶を濁した。

見守りか。


 日本維新の会の前原誠司共同代表も「まずは説明することが大事」と言うにとどめている。野党各党の国対委員長らは8日の会談で、政倫審での弁明を求める方針で一致。12日の衆院予算委員会の集中審議でも追及する構えではいる。


「石破首相が延命した方が、野党は参院選を戦いやすい。それは衆目の一致するところですが、野田周辺が念頭に置くのは参院選後の政局。石破総理から秋波を送った大連立構想は消えていません。2人は新進党時代に同じ釜の飯を食い、財政規律派としても気脈を通じ、〈総理を目指す〉と公言する国民民主党の玉木代表に対する嫌悪感も共有している。立憲の党内は相変わらずグチャグチャしてますから、一定数が離党してブラッシュアップすれば、それもよし。ともかく野田代表には石破政権を倒しにいく理屈がない。本格的な政界再編が起きる可能性があります」(野党関係者)


 全くワクワクしない展開必至だ。


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 消費税「食品ゼロ1年間」を参院選の公約にブチ上げる野田立憲ですが、与党との“バーター説”が根強く囁かれている。

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