「楽しい日本」というスローガンを覚えているだろうか。今年1月の通常国会召集日、初めての施政方針演説に臨んだ石破首相が打ち出し、総スカンを買ったアレである。
19日の参院予算委員会では年金法案などに関する集中審議を実施。政府・与党は当初3月中旬に法案を提出する予定だったが、目玉である「基礎年金の底上げ策」を巡り、参院選を控える議員を中心に自民党内から異論が噴出。スッタモンダした挙げ句、予定から2カ月遅れの今月16日に国会提出したのが、底上げ策を削除した「あんこのないあんパン」だった。
こうした経緯を踏まえ、立憲民主党の打越さく良議員が「2020年の年金改正法における付則第2条3項では、基礎年金の水準低下を踏まえ、必要な措置を講ずることとされていた」と指摘。「就職氷河期世代が低年金に陥ることは分かっていた。そのために基礎年金底上げ策が必要だと分かっていたんです」と続け、「自民党のために『消した年金法案』ではないか」と迫った。
09年に自民党を下野に追い込んだ「消えた年金問題」が頭をかすめたのか、石破は敏感に反応。底上げ策に関して厚労省の社会保障審議会(年金部会)でも賛否が上がったと強調し、「決して自民党の都合だけで遅らせたとか、そういうものでは断じてない」と反論した。
そして、年金法案に盛り込んだ「106万円の壁の撤廃」や「在職老齢年金の見直し」の必要性に触れ、「今回の年金改革をすべて先送っていいことにはなりません」と謎の理屈をツラツラ。「そういう措置を多く講じているので、自民党の都合で(提出を)遅らせたとか、そんなことはない」と反論を重ねた。
仮にも自民党総裁、行政府の長である。
打越氏が「選挙目当てで就職氷河期世代を見捨てるとは言語道断」と批判すると、さらに石破はヒートアップ。「誰が見捨てると言いましたか。そのようなことは一切、言っていない」と気色ばみ、「一部のみを切り取ってそれをデフォルメしてお話しいただくのはやめていただきたい」と語気を強めた。
怒りたいのは、物価高にあえぎながら将来の低年金リスクに怯える就職氷河期世代のほうである。イライラするくらいなら、さっさと「あんこ」を出したらどうか。
◇ ◇ ◇
石破政権の「参院選対策」はことごとく裏目に出そうだ。関連記事【もっと読む】で詳しく報じている。