早くも“進撃”はストップしそうだ。
高騰が止まらないコメ価格への対策を巡って、「担当大臣」を自任する小泉進次郎農相が26日、備蓄米放出の新方式を発表した。
進次郎氏は「やれることはどんな手でも使って価格を抑制していく」と意気込んだが、うまく事が運ぶかは極めて怪しい。「相場全体を下げるには至らないでしょう」と言うのは、農政に詳しい自民党関係者だ。こう続ける。
「『5キロ2000円』を強調する進次郎さんの言葉を聞いていると、劇的にコメが安くなるかのような印象を受けますが、基本的に安いのは備蓄米だけです。既に買い付け競争が進む2025年産米は、店頭価格が4000円超になるとみられます。また、『無制限で放出する』とも言っていますが、備蓄米の総量は約90万トンで既に31万トンを出し、今度30万トン放出するわけですから残りは30万トン。無制限というわけにはいきません」
注目すべきは、26日農水省内に発足した「米対策集中対応チーム」の存在だ。事務次官が指揮を執り、省内の約40人のメンバーで構成される。全国の地方農政局からは500人規模が参加する。
「表向き事務次官が指揮を執ることになっているが、チームは事実上、大臣の直轄だ。特にコメに詳しい職員を集めた組織で、最大のミッションは当然ながらコメ価格の安定化。ただ、裏ミッションは進次郎さんの“行動監視”とみられている。既に彼は随意契約や直接売り渡しといった、これまでの農政ではあり得なかったやり方に手を付けており、農水官僚が疲弊し始めている。暴走しないようにコントロールする狙いがあるようです」(霞が関関係者)
つまり、チームは進次郎に対する「防衛シフト」というわけだ。
森山幹事長と林官房長官が消極的
改革反対派は政府・与党内にも存在する。
ひとりは、農水族の“ドン”である森山裕幹事長だ。「農家がコメを引き続き作っていこうと思ってもらうため、再生産ができる価格で売買されることが大事だ。安ければいいというものではない」と、安易な値下げにクギを刺していた。
もうひとりは、林芳正官房長官である。
「林さんは農相経験者でもあり、考え方は生産者優先の森山幹事長や、辞任した江藤拓前農相と近い。
党と政権の要にソッポを向かれるとなると、進次郎が描くコメ全体の値下げプランは頓挫必至。何より、国民はガッカリだろう。
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28日に農林水産委員会同委で行われる質疑で進次郎農相は、いきなり野党党首クラスと相対する。進次郎氏にとって「鬼門」となるのは必至だ。関連記事【もっと読む】で詳しく報じている。