【お笑い界 偉人・奇人・変人伝】#245


 宮崎哲弥


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 評論家、コメンテーターとして幅広く活躍されている宮崎哲弥さん。初めてご一緒したのは、大竹まことさんに「日本で最強のトーク番組」と言わしめた「痛快!エブリデイ」(関西テレビ)の名物コーナー「男がしゃべりでどこが悪いねん!」でした。


 MCの桂南光さんが「なんでもありですから、好きに言うてください。けど、この番組出てたら評論家の信憑性がなくなりまっせ。大丈夫でっか?」と心配されました。ところがご本人は「これだけ好きなこと言える番組はないですし、みなさんのレベルが高いですよ」と気に入ってくださり、ゲストから月イチレギュラーになり、10年弱ご一緒しました。


 いつも自分のスタンスを崩すことなく「19◯◯年にイギリスで同じようなことが起こってます」「私の記憶では◯回目だと思います。1回目は~」と、政治情勢から歴史上の人物、アイドルのデビュー曲まで、どんな話題でも的確に具体例を挙げて話される。その博識ぶりに出演者も驚くばかりでしたが「たまたま知ってたことですから」と苦笑しながら恐縮されるのが印象的でした。


 合間には芸人さんとも気さくに話し、論客という堅いイメージがいい意味でどんどん崩れていきました。そんな打ち解けた宮崎さんを「住んでる世界が違う!」と思ったことがありました。


 本番が終わり、喫茶コーナーで談笑していると携帯が鳴り「12時に伺えばよろしいですね、じゃあ明日よろしくお願いします」と聞こえました。戻ってきた宮崎さんに「えらい改まって、彼女ちゃいまっか?」と出演者がちゃちゃを入れると「ならいいんですけどね、小泉さんとお昼食べなきゃいけないんですよ」「キョンキョン?」「それならうれしいけど、小泉総理です」「今の小泉さんからの電話?」「秘書官の飯島さんからです」「小泉さんから呼ばれましたん?」「昼食をご一緒できないか? って」「こんな電話初めて聞いたわ!」「新聞の“首相動静欄”に宮崎哲弥と会食って載りますから」「昼飯代はタダでっか?」「当たり前やがな、呼ばれたはんのに!」とまず聞くことのない話題に、宮崎さんが帰られた後も大いに盛り上がりました。


 ニュースや他のバラエティー番組でも打ち合わせした内容はもちろん、途中で話題が変わっても、私の知る限り「それはわかりませんね」ということがなく、どんな話でも解説されていたのには感服しました。


 お笑い芸人の考察・分析をする番組のゲストでオファーした際は「関西の若手のお笑いまではわかんないよ。ホントに僕でいいの?」とおっしゃっていましたが、本番になると「このコンビが人気があるのは社会的にこういう時代だからウケて当然なんですよ」と説得力のある“宮崎節”で解説。「宮崎哲弥さえいれば番組が回る」と言われる理由を目の当たりにした一幕でした。これからもその博識ぶりを大いに発揮されて活躍されることでしょう。


(本多正識/漫才作家)


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