【お笑い界 偉人・奇人・変人伝】#246
小錦
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相撲界は大の里関の8年ぶりの日本人横綱誕生に沸きました。若い世代にとって外国人力士=モンゴル出身となるでしょうが、私のような60代にとって外国人力士といえば、初の外国人大関になったハワイ出身の小錦関です。
そんな小錦さんにお会いしたのはタレント活動を始めた頃でした。打ち合わせに行って会ってきたディレクターから「まぁびっくりしますよ。テレビを見て感じてる大きさじゃないです!」と聞かされてはいましたが本当に驚きました。
巨体を揺らして肩で風を切るように楽屋に入ってくると、大きな目を一段と見開き、こちらがビクッとするくらいの圧を感じたと思ったら小声でスタッフひとりひとりに丁寧に挨拶され、大きな体と腰の低さとのギャップがなんともかわいらしく、好感度は爆上がりでした。
体が大きすぎて、ゲストの登場口からは出られず、MCの(トミーズ)雅くんが「今日のゲストはこの方です」と紹介しても誰も出ず、観覧席のみなさんが登場口に注目したスキに、反対側から小錦さんがのっそのっそと歩いて登場。「キャー!」という悲鳴とも歓声ともつかない声が上がり、ざわめいたのが印象的でした。おそらくあまりの大きさに驚かれたのだと思います。
イスも普通のサイズではお尻が収まらず、この日のために作った特大のイスを運び込み、その大きさにまたどよめきが湧きました。雅くんが「いまダイエットしたはるんですね? 効果出てます?」と聞くと「少しだけ……」「どれくらい?」「60キロ」「60キロて人間1人分やがな!!」。
わざわざ「少しだけ」という言葉をはさむことで「60キロ」のインパクトを大きくして観覧席も「えぇ??!?」という驚きの声に包まれました。
終始、穏やかでにこやかに話されていた裏には、言葉も習慣も違う日本に来られて大相撲という特殊な環境に身を置き、大ケガに見舞われながらもそれを克服して大関までなられた芯の強さがあるのだろうなぁと感じていました。体の大きさとは関係なく、包み込むような優しさが漂うすてきな方でした。これからもさまざまな方面でのご活躍を期待しています。
(本多正識/漫才作家)