【死ぬまでにやりたいこれだけのこと】
役者歴20年の大和田美帆さんのやりたいことは、子どものために病院を回る活動を広げること。父・大和田獏とのユニットも好評だ。
病気や障害のある子どもが歌やお芝居を見て笑ってほしいという思いで、「子どもが笑えば世界が笑う」プロジェクトを3年前に立ち上げて、今年、一般社団法人になりました。その一環で父とは「ばくみほ」というユニットで回っているんですよ。
実は20代から子どもたちのいるところへ歌いに行っていたんです。学生時代から私は保育士にもなりたくて演劇の大学と保育士の資格が取れる大学を受けたら、合格したのが演劇の方だったんです。だから、子どもはもともと大好き。好きな2つが今結びついている感じですね。
■5年前に母・岡江久美子が亡くなったこともきっかけ
始めたもうひとつの理由として、5年前に母(岡江久美子)が亡くなった時に「人は誰かに何かを与えて亡くなっていくんだ」としみじみ思ったことも大きかったです。いろんな人に種をまいて、受け取った人はその種を育てて生きていくんだなと。とくに母はそういう人でしたから。
好きだから20年間、ミュージカルを続けてきましたが、人のためになることとして病院などを回り始め、今は父を巻き込みました(笑)。父は前からそういうことをやりたかったらしいんです。いずれは病院を訪ねて、子どもの前で童話を読み聞かせたり、紙芝居をやる「おはなしおじさんになりたい」と思っていたみたいで。
父はマジックの腕前を上げている
私は母と似て考える前に動くタイプですが、父は考えはあっても、なかなか動かないタイプなので、私が「じゃあ一緒にやろうよ」と強引に引っ張り込んで親子で回っています。先月のこどもの日に「こどわらフェス」というイベントを行った時は私が「これ読んで」と選んだ物語を素晴らしい演技で披露してくれて。自分からは行動しないけど、朗読を頼むと120%の仕事をしてくれる人(笑)。来てくれたみなさんも「獏ちゃん、よかった」と言ってくださいました。
父は朗読だけでなく、最近はマジックも始めていて腕前はまだまだこれからですが、向上心が高いのでネットでいろんなマジックグッズを集めています。子どもは手品みたいな派手な出し物が好きですから喜ばれます。私が歌って、父が朗読やマジック。
これからやりたいことは今の活動を広げて、もっと多くの子どもたちに会いたいです。最近は地方の福祉病院にも呼んでいただいています。
それから演劇のよさを子どもたちに広めることも。日本には演劇が小学校の授業にないですよね。お芝居をすることは、人に必要な力を培うことができるというエビデンスもあるんです。
■9歳の娘も楽器演奏で活動に参加
例えば、今は公園で遊べない子どもがいるといいます。ゲームやテーマパークでは遊べるけど、何もない原っぱみたいな公園だとどう遊んでいいのかわからない。そういうところで遊べるには想像力や発想力が必要だと思いますし、そのためにも演劇をやることは大切かなと。
ですから、もうひとつのやりたいことはワークショップなどでお芝居の体験をしてもらうこと。これは今始めたところです。水泳やピアノなどの技術と違ってお芝居の表現力、想像力は目に見えにくいですから、浸透するのに時間がかかるかもしれませんが、5年後、10年後には子どもたちが授業で演劇を学ぶ未来になってほしいんです。
最近では9歳の娘も参加してくれています。ママと祖父が歌ったり朗読したりする様子を見せていたら「私も何かやりたい」と。今は楽器を演奏したりで参加しています。親子3代にわたって活動を続けることもやりたいことですね。
プライベートでやりたいことは、その娘にいろんな世界を見せたいので、一緒に外国を回ることです。
私、大人になってからムーミンが大好きになったんです。子ども向けのアニメでありながら哲学的な部分がありますから。絵のタッチも優しくて言葉遣いもキレイですし、友情や家族の絆が描かれ、何よりムーミンには冒険する心があり、そして両親がムーミンの冒険に寛大。なので、子どもに見せるには最高のアニメだと思っています。
フィンランドに行くモチベーションにはなかなかなりにくいですが、母娘でムーミンバレーパークに行った時に娘も好きになったので「ムーミンが好きってだけで行けるんじゃないか」と(笑)。
それに母も生前にフィンランドへ一人旅に行き、「すごくよかった」と言っていたので、母が回った場所を母娘で回ってみるのもいいかなと。
娘にはムーミンのように失敗を恐れずに挑戦してほしい。その気持ちを伝えるためにも、まず私が子どものための活動で挑戦を続けたいと思います。
(聞き手=松野大介)
▽大和田美帆(おおわだ・みほ) 1983年8月生まれ、東京都出身。2003年に舞台でデビュー。以降ミュージカルなどで活躍。