【芸能界クロスロード】


 テレビ番組の中心を成すバラエティー。「似たような内容で出る人も大差なし」と言われようと、テレビ局にとっては欠かせないコンテンツだ。

最近は音楽、クイズ、散歩番組もバラエティー化するなど、飽きられない工夫が見える。出演者も芸人、グラドルらお馴染みのメンバーに加賀まりこ、羽田美智子、名取裕子ら女優も色を添えるなど、多種多様な人を起用して新鮮さを演出している。


 歴史を振り返れば、バラエティー全盛期だった80年代は「オレたちひょうきん族」、ビートたけしの「スーパーJOCKEY」「風雲!たけし城」など、芸人が体を張ったリアクションが売りだった。


 芸人を中心にしたバラエティーでは女性タレントは「合いの手を入れる」お飾り的な一面もあった。グラドルを抱える芸能事務所にとって「どうすればバラエティーで頭角を現すことができるのか」が課題だった。セクシーで売った子もいたが、お色気抜きで課題を克服したのが小倉優子だった。「こりん星のりんごももか姫」という不思議ちゃんキャラで登場。見たこともないキャラで注目され、たちまち人気者になった。ネタとはわかっていても頑なにキャラを通し続けたが、「嘘の限界」とキャラを卒業。ママタレとして活動している。


“おバカキャラ”で一世風靡したスザンヌは15日の「上沼・高田のクギズケ!」に出演。売れるきっかけになった“おバカキャラ”は強要されたものだったと明かした。

番組の打ち合わせの段階で「こういう感じでお願いします」と珍回答を注文されおバカなフリをしていた。バラエティーでは“ヤラセ”ではなく、“演出”と捉える。当時、スザンヌのおバカ発言を信じていた小・中高生もすでに大人。「だまされていた」と笑い話で済む話。


 モデル出身の梨花も先日出演した「ぽかぽか」で「番組内で喧嘩するように制作サイドから指示されていた」と明かした。相次ぐタレントたちの裏話解禁。テレビ関係者は、「キャラをつくって演出する時代は終わったことを意味している」という。最近のバラエティーは突出した人気、視聴率を誇る番組は少ない。「良くもなく悪くもなく」平均化するなか、好調を続けているのが2021年にスタートした「オモウマい店」(日本テレビ系)だ。サブタイトルに“ヒューマングルメンタリー”とあるように、人間と食をテーマにした内容。人気店をタレントが食リポするのと違いリポするのはディレクター。紹介する店も庶民感覚あふれる大衆的な店。

デカ盛りに激安、キャラの立った店主の面白さ。ヤラセも演出もない。人間味あふれる言葉が見る人を惹き付ける。スタジオで感想を言うだけのタレントがいなくとも成り立つ面白さがある。


 同じ日テレでみのもんた司会で始まり今年18年目を迎えた「秘密のケンミンSHOW極」。スタジオでは県民代表のタレントが居並ぶが、主役は街頭インタビューに答える個性豊かな県民。大阪のおばちゃん、おっちゃんは今や鉄板の出演者。毎回のように登場して笑わせる。


「タレントを起用すれば、段取りを決め予定調和になる。素人はなにが飛び出すかわからない面白さがある」(テレビ関係者)


 いち早く素人に目を付けた日テレに先見の明あり。


 素人がバラエティーの主役になる日も近い?


(二田一比古/ジャーナリスト)


編集部おすすめ