やはり“聖域”に手を突っ込む気らしい。
6月30日、トランプ米大統領が「日本はわれわれのコメを受け取ろうとしない。
日本は年間77万トンのミニマムアクセス(最低輸入量)米を海外から無関税で輸入。米国からも直近では年間約34万トンを輸入しているが、枠外分には1キロ341円の関税を課している。トランプは“おらがコメを無関税でもっと買え”と言いたいようだ。
さらに「われわれは日本に書簡を送るだけだ。今後、何年も貿易相手国として日本を歓迎する」とも記した。トランプ大統領は「書簡」というワードを29日にも使っている。現地メディアのインタビューで、対日自動車貿易を「不公平だ」と非難。日本が25%の自動車の追加関税見直しを求めていることに触れ、「書簡を送ることができる。『親愛なる日本様、日本から輸入される自動車には25%の追加関税を課します』というものだ」と発言していた。
「協議無視で『書簡だけを送りつけるぞ』と圧力をかけ、アクションを求めているのでしょう。『自動車関税を下げて欲しければ、米国産米の輸入を拡大せよ』とのメッセージ。
トランプ大統領の脅しに石破政権は警戒感マックスだ。林官房長官は「農業を犠牲にすることは考えていない」と発言。交渉担当の赤沢経済再生相も「農業生産者が安心して再生産できる環境をつくる」と話し、輸入拡大を否定した。石破首相も先月29日の日本農業新聞のインタビューに「米の輸入を増やすとか、ミニマムアクセス米とかを考えていることはない」と答えていた。
「参院選目前に米国からコメ輸入拡大を迫られるのは、自民にとってキツイ。輸入拡大を認めれば、大票田の農家の離反を招きかねない。ただでさえ、小泉農相の米価抑制策に生産者の不安が広がる中、惨敗必至です。その足元を見た上で揺さぶりをかけるため、トランプ氏はこの時期にあえて『コメを買え』と言いだしたのではないか」(官邸事情通)
■いま行けば「飛んで火に入る夏の虫」
石破首相には関税交渉を選挙対策に利用する「奥の手」があったが、もはや無理筋だ。
相互関税上乗せ分の猶予期限は7月9日。公示日と時期が近いため、「交渉の成果をアピール材料にする狙いがあった」(同前)。さらに、選挙期間中の「訪米プラン」まで浮上していたが、頓挫は免れない。
「選挙中の訪米で成果をあげれば、プラス効果は絶大です。総理本人が検討したそうですが、いま訪米しようものなら、飛んで火に入る夏の虫です。コメの輸入拡大をのまされてしまえば、一気に大逆風でしょう」(永田町関係者)
トランプ大統領に「NO」を突きつければいい話だが、石破首相にそれはできやしまい。
トランプ「日本は30~35%の関税支払うことに」
連日のように日本への強い不満を表明しているトランプ米大統領が、一段と圧力を強めた。7月1日、記者団に関税交渉に関して「合意できるかどうか疑わしい」と表明。日本に手紙を送って「30%か35%、もしくはわれわれが決めた数字」の関税を課すことを伝えるとも述べた。日米両政府は、9日に迫る「相互関税」の上乗せ分の停止期限を念頭に交渉していた。
トランプ大統領はこの日も「コメを切実に必要としているのに受け入れようとしない」「日本は車を受け入れないが、何百万台も米国に売る」と改めて持論を展開。「貿易に関しては非常に不公平だった。そんな時代は終わりだ」と強調した。また、相互関税の上乗せ分の停止期限延長は「考えていない」と明言した。
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