【お笑い界 偉人・奇人・変人伝】#251
田山涼成
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「私なんかで良かったんでしょうか?」
トーク番組に来ていただいた第一声から謙虚。田山さんはイメージ通り、いえ、それ以上に謙虚で生真面目な方でした。
観客のみなさんが拍手で迎えると「みなさんお優しいですね」とハンカチで汗をぬぐいながら恐縮しきり。
MCの(トミーズの)雅くんが「そない恐縮しはらんでも」と言うと「いえいえ、私の代わりなんかいくらでもいますよ。私だけじゃなく主演の方の代わりもいくらでもいるんです。ご病気や事故で降板されても必ず代役が立ちますから、だから頂いた役は一生懸命に務めないといけないんですよ」と力説。
「自分なりにプライドを持って演じてますけど、ひとりじゃ何もできないですから。“もっとできたんじゃないか?”という悔いを残さずにやりたいと私は思っています。ですから今日も一生懸命しゃべらせていただきます」と笑顔で宣言されていました。
“謙虚と感謝の塊”田山さんが奥さんの話になるとそれまで以上に感謝があふれ出します。
「同じ劇団にいたんですけど、結婚が決まると、売れるかどうかもわからない私のために自分の夢を捨てて、家庭に入って支えてもらいました。今があるのはほんとに妻のおかげです」
雅くんの「浮気は?」という言葉を途中で遮って「とんでもないです! 一度もしたことないし、しようと思ったこともありません。これだけ尽くしてくれてる妻を裏切れますか?」とバッサリ。アシスタントのなるみちゃんが「ダンナさんのかがみですね!」と言うと観覧席から大拍手が起こり、上っ面だけではない力強い筋の通ったものを感じました。
収録が終わり、田山さんが帰られた後、雅くんが「芸能界にもあんな聖人君子みたいな人、ホンマにいてるんやな……」と感心したように言うと、相方の健ちゃんが「(浮気を)したいとも思たことないて、ホンマやろか? 気持ちぐらいあるんちゃうん?」と首をかしげると、なるみちゃんが「ああいう人もいたはんの! みんなが自分とおんなじやと思たアカンで! ツメのあかでも煎じて飲ましてもらい!」とクギをさして大笑いに。
田山さんの裏表のない実直さがよく伝わった気持ちのいい収録になりました。
(本多正識/漫才作家)