「ネットで見たものは丸々信じ込んでしまうのに、メディアの情報には“裏がある”と考えてしまう人が増えていることに危機感を持ち、まずは子どもたちに、ちゃんとしたメディアリテラシー教育が必要だと思いました」
こう語るのは、テレビ朝日OBの鎮目博道さん。30年以上テレビニュースなどの制作に携わってきた鎮目さんは、絵本作家の松本えつをさんと『それウソかもよ? うちゅうじんがやってきた! のまき』(ちこらブックス=7月15日発売)という絵本を出版する。
「あちこちで講演会などをしているので、いろいろなお母さんや子どもたちに話を聞く機会があるのですが、いまの子どもたちは、自分が好きな人の発信する情報は信じるけれど、そうではない人の情報はまったく関心を持たない傾向があると感じました」
鎮目さんは「テレビは子どもたちにとっては“嫌な奴”に映っているのだな」と感じ、「もっとテレビ業界人が“イイ奴”にならないと、ニュースは信じてもらえない」と気づいたという。業界の改革が必要だと感じると同時に、子どもたちにも「もっとフラットに情報を使いこなせるようになってほしい」という思いが強くなったそうだ。
「共通の知り合いである編集者の主催する出版イベントで知り合った絵本作家の松本えつをさん。子ども向けの絵本を多く手がけられていたので『一緒にメディアリテラシーについての絵本を作りませんか?』とお声がけしたら、ご快諾いただけました。できるだけ子どもにも分かりやすく“情報との付き合い方”を伝えられて、大人が読んでも楽しく読めるような絵本にするためにずいぶん苦労しました。松本さんとおよそ1年をかけて、じっくり丁寧に作り上げたつもりです」
この世に100%正しいものはない
ある日突然、地球に宇宙人がやってきたのだが、なにが目的か分からない。そこで、選ばれた数組のユーチューバーが、宇宙人に突撃して動画を制作・公開するというストーリー。子どもも大人も楽しみながら、メディアリテラシーを高めることができるような内容になっている。
「この世の中に、100%正しいものは無いと思うことが大切だというのが、長年ニュースを制作してきて、強く思うことです。ぜひ、多くの人に“この情報は、80%くらい信じよう”とか、“これは50%くらいだな”とか、情報を採点するつもりで受け止めてほしいんです」
鎮目さんは、テレビ業界を内部から改革する活動と合わせて、各地の学校や自治体を回って、情報との付き合い方を分かりやすく伝える活動を続けていくつもりだという。
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鎮目さんはベテランテレビプロデューサーとして、テレビ局の問題点も分析している。