【お笑い界 偉人・奇人・変人伝】#254


 ななまがり


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 先日行われた「ダブルインパクト 漫才&コント二刀流No.1決定戦」(日本テレビ系)のファイナルに出場した「ななまがり」。彼らは大阪芸術大学の落語研究会出身で、ミルクボーイの後輩。

NSCを経ずにオーディションを勝ち上がって吉本の所属になった強者です。


 若手の劇場を指導していた時に彼らが吉本に所属したのですが、ツッコミの初瀬くん(写真右)に見覚えがあったので「どっかで会ったことあるよな?」と話を聞いてみると、数年だけ開設した岡山NSCに香川県の高松市から通って来ていた高校生でした。「あの目力の強かった高校生か!?」「はい。高校の時も“目力強いな!”って言われました」とのことで、よほど印象に残っていたようです。ななまがりとしては「キングオブコント2016」「THE SECOND2024」「ダブルインパクト2025」と3大会のファイナリスト。さらにボケの森下くん(写真左)は「R-1ぐらんぷり2020」の決勝にも進出しているので、唯一の4大会ファイナリストでもあります。


 今回もクセの強いネタでしたが、デビュー当時はもっと独創的で、私ではとても思いつかないネタに少なからず羨望のまなざしで見ていました。時に独創性が強すぎてお客さんがついていけないこともありましたが、誰もマネのできない彼らのネタとその希少性を買っていました。今回も芸人の中でも飛び抜けた声量、舞台狭しと動き回る躍動感、セオリー無視というか想像をはるかに超えた展開でお客さんを圧倒した迫力満点の舞台でした。惜しくも下位に終わりましたが、予選では一番ウケていたということで、ぜひ生の舞台で実感していただきたいと思います。


 一時は、観客にわかりやすいようにマイナーチェンジしたこともありましたが、自分たちがやりたい芸風を貫きたい意思が強かった。そうして長年「ななまがりワールド」を貫いた結果、ネットの浸透で趣味嗜好が多様化し“時代がついてきた”というか、花開いた感があります。

また“キモカワ”な外見も、年を重ねたことで、キモより、“カワイイ”に変わったことも追い風でした。


 今回披露した、取引先がビキニで現れるコントに関して言えば……ピンクのビキニ姿を指摘され、慌てて着替えに戻ったかと思ったら「変わらぬピンクのビキニで再登場」というのが残念。3度目に黄色のビキニで登場しましたが、色変わり衣装変わりの展開を早くして、観客に「次は?」と期待させて欲しかった。そんなところも含めて、“伸びしろ”はまだまだあります。


 ファイナリストとして爪痕を残したことで、探究心旺盛な2人を地上波で見る機会も増えていくことになるでしょう。これからも独自の世界を突き進んで欲しいと思います。 


(本多正識/漫才作家)


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