【あの頃、テレビドラマは熱かった】#2
「結婚したい男たち」
(1991年/TBS)
◇ ◇ ◇
1991年のフジテレビは絶好調で、1月期の月9「東京ラブストーリー」は最終回に視聴率30%超え。若年層の心を捉えたフジの“プロデューサー主導システム”が成功する一方で、黄金期の手法をひきずっていた“ドラマのTBS”は、やや精彩を欠いていた。
そんな91年7月期のTBS金ドラが「結婚したい男たち」。「男女7人夏物語」(86年、TBS)で“貞九郎”を演じ、モノマネや熱々おでんのイメージから俳優業に軸足を移す片岡鶴太郎(70)の連ドラ初主演作だった。鶴太郎と布施博が“結婚できない”兄弟で、南果歩、山口智子、とよた真帆、風間トオル、和久井映見の“男女7人”が繰り広げるラブコメ。
鶴太郎ととよた真帆が序盤から意表を突く激しいメークラブ! 山口智子と南果歩がほぼ毎回入浴シーン! とサービス精神旺盛だったが、視聴率は振るわなかった。
そんなことより、僕はこれがドラマ初プロデュースとなる貴島誠一郎さんが、この2~3年前、編成部で再放送を担当していたころを思い出していた。記者として再放送のラインアップを聞きに行った僕に、貴島さんはこう語ったことがある。
「映画はGP帯で何回も放送されてセールスになるのに、ドラマって1回やったら後は数年後の平日昼間にやるだけ。新作の番宣の意味はあるんだけど、もっと価値があってもいいかなって、僕は自分の見たい過去作品を時々入れている」
だから貴島さんの編成時代は、昔の名作「天皇の料理番」「茜さんのお弁当」「高原へいらっしゃい」なんかが、唐突に再放送されていた。
さて、その貴島さん初プロデュースの「結婚したい男たち」は、ちょうど前日のフジ木曜劇場、結婚をテーマにした恋愛模様を女性目線で描いた安田成美主演の「ヴァンサンカン・結婚」に惨敗。ただ、この事実が貴島さんをラブコメではなく“家族”を題材にしたものにシフトさせる。
92年の「ずっとあなたが好きだった」、93年の「ダブル・キッチン」を生み、貴島誠一郎は押しも押されもせぬヒットメーカーに。その後は95年「愛していると言ってくれ」や2000年「ビューティフルライフ」などのディープな純愛もので、恋愛分野でもきっちりリベンジを果たした。
「結婚したい男たち」の前クール、フジテレビの「もう誰も愛さない」でジェットコースターな運命に翻弄されるヒロインを演じた山口智子に、明るく思ったことをハッキリ言うキャラを与えた功績も大きいかも。それが96年のフジ月9「ロングバケーション」の“南”につながったかと思えば、このドラマは視聴率以上に意味がある。
(テレビコラムニスト・亀井徳明)