【孤独のキネマ】


 ランド・オブ・バッド


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 今さら言うのもなんだけど、世の中は暑い。熱中症で倒れそうだ。

こんな日は戦争映画でスカッとしたいと思い、この「ランド・オブ・バッド」を見学した。ベテランのラッセル・クロウと若手のリアム・ヘムズワースの共演作だ。


 イスラム過激派の温床、スールー海に浮かぶ島で、米軍特殊部隊「デルタフォース」による極秘任務が開始される。目的は誘拐されたCIAエージェントの救出と回収。この作戦にJTAC=統合末端攻撃統制官のキニー軍曹(リアム・ヘムズワース)も航空支援の連絡役として参加する。


 百戦錬磨の最強軍団に囲まれ、経験の浅い新兵のキニーはやや緊張気味だ。彼らが目的地に着いた直後、思いもよらない「来客」が出現したため大銃撃戦が展開。巻き込まれた部隊は壊滅寸前に陥ってしまう。


 孤立したキニーの唯一の希望は遠隔地から作戦を支援する無人戦闘機オペレーターのリーパー大尉(ラッセル・クロウ)だ。通信、支援、武器は限られ、極限の48時間が始まるのだった……。


 敵兵がウヨウヨいる戦地の真ん中に取り残された兵士と、彼を手助けする無人戦闘機の操縦士。ハリウッドが得意とする人間関係である。


 1988年作の「バット★21」ではジーン・ハックマンが敵地で孤立し、救援ヘリの黒人パイロットとの交信によって脱出。戦争映画ではないが、88年作の「ダイ・ハード」はニューヨークの巨大ビルに潜入したテロリストと戦う刑事のブルース・ウィリスが黒人警察官と無線でのやり取りをしながら悪党どもを蹴散らした。死地の英雄と安全圏の支援者の友情物語はハリウッドのお家芸。アメリカ人が喜ぶ永遠のテーマなのだろう。



「そうきたか」と膝を叩く結末

 それはともかく、本作は一転、二転、三転と物語が小気味よく展開していく。経験の浅いキニーが作戦に参加。歴戦の3兵士につき従い、楽勝かと思ったら、敵陣営に思わぬ波乱が起きる。人道上の観点から見て見ぬふりはできないと想定外のドンパチが始まるという、いかにも「アメリカ人は博愛主義だよ」という筋立てだ。かくしてキニーは無人戦闘機操縦士のリーパーに支援されて敵襲を切り抜ける。


 無人戦闘機による味方と敵兵の捕捉と爆撃、ジェット機によるミサイル攻撃。これに筆者の好きな狙撃銃による一撃必殺射撃が加味されている。弾は飛んでくるわ、ミサイルは爆発するわとド派手な映像の連続。

かと思えば、キニーが逃げ回る際の敵兵との緊迫場面など見どころ満載だ。惹句の「最前線を、追体験」が表すとおり、リアルな戦闘が波状攻撃で襲ってくる。


 本作ではJTAC(統合末端攻撃統制官)という肩書が登場する。このような任務があることを寡聞にして知らなかったため、良い勉強になった。


 リーパーとキニーは親子ほど年が離れているが、偶然にも同じ州の出身者。そうしたこともあって、両者に友情が芽生えるというお約束の展開だが、困ったことに本作では上官が口出ししてくる。あれれ、名優ラッセル・クロウの立場はどうなるの?と、キニーの壮絶バトルだけでなく、物語の締めも気にしているうちに「そうきたか」と膝を叩く結末に突入だ。米国の戦闘部隊が必ずしも正義だとは言わないが、猛暑なんだから深く考えずにドンパチを楽しみたい。


 それにしてもラッセル・クロウは顔も体も肉がたるんでいる。マッチョ体型のリアム・ヘムズワースとの対比を鮮明にするためにあえて太ったのか、それとも61歳を迎え、体重コントロールを諦めたのだろうか。


(配給:AMGエンタテインメント/TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー中)


(文=森田健司)


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