【テレビ局に代わり勝手に「情報開示」】


 確かに、広陵高校問題をめぐるアナウンサーの発言が賛否を呼んでいますよね。つい最近は参政党をめぐるアナウンサーの意見も話題になりましたし、最近こういう「各局アナウンサーの意見がSNSを騒がせる」ケースが多くなっていますよね。


 「アナウンサーは個人的意見を言うべきかどうか」という命題は、じつはまだまだ放送業界内でも意見が分かれるところだと思います。局によっても、例えばNHKの報道などではまだほぼアナウンサーが自分の意見を言うことは許容されていないでしょうし、若干温度差がありそうです。また、同じ放送局でも個人的意見を言うアナと言わないアナがいる感じですよね。番組によっても、アナウンサーの個人的意見を許す番組と許さない番組に分かれそうです。


■「専門家か取材者に限るべき」と教育を受けたが…


 じゃあ、ひとりのプロデューサーとして、私はどう考えるか? というと、これまた微妙です。原理原則に沿って考えると、「裏方に徹するべきサラリーマンである放送局員が意見を言うべきではない」というのが、私の考え方の根本にはあります。そう教育されてきましたしね。「公共の電波、特にニュース系の番組で意見を言うべき人は、ちゃんとした情報や見識がある専門家か取材者に限るべき」というのが、あるべき姿ではないかと思うんです。局員が話すなら、台本に書かれたことか局の見解を代弁するか、取材に基づいている場合かであるべきだろうと私は思います。ただ、同じ局で教育を受けたはずの玉川徹先輩なんかは、バリバリ自分の意見を言いまくってますけどね(笑)。


 ここのところアナウンサーの中にも、非常に上手に個人的な意見を言える人が出現してきたのもこれまた事実です。元日テレの藤井貴彦アナとか、TBSの井上貴博アナとか、古巣テレ朝だと小松靖アナとか、なかなかしっかりとした個人的意見を言えて、ちゃんと番組を良い方向に向けることのできる才能があるな、と思える人たちです。


 テレビが素人の肌感を語れるコメンテーターを重視するようになって、芸人さんやアイドル、会社経営者など多様な人が「個人的な意見を語ること」が多くなって以来、それをまとめるアナウンサーが「個人的意見を自分も表明することで、番組を導いていく」役割を求められるように変化してきたと言えるかもしれません。また、「局を辞めて独立したフリーアナウンサー」がキャスター的役割を務めることが増えて、「アナウンサーが意見を言っても問題ない」という空気感がどんどん強くなっている気もします。


 あなたはどう思いますか?アナウンサーの役割がこれからどうなっていくのか…大きな変革の真っただ中にあるような気がします。


(鎮目博道/テレビプロデューサー、コラムニスト、顔ハメ旅人)


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