異様な光景だった。「抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80周年」の式典が3日、中国・北京市の天安門広場一帯で開かれ、26カ国の首脳が出席。
中国国営テレビが生中継する中、「動乱の枢軸」たる中ロ朝トップ3人は各国首脳を先導する格好で天安門楼上に並び、軍事パレードを参観。核弾頭を搭載可能な潜水艦発射弾道ミサイル「巨浪3」など、新型兵器のお披露目に立ち会った。
今回の訪中では、金正恩の娘ジュエが初の外交デビュー。後継者として国内外にアピールする狙いがあるとみられるが、軍事パレードには姿を見せなかった。
全体主義者の世界代表3人が「反ファシズム勝利」を祝う絵面自体、グロテスクそのものだが、異常なまでの協力アピールも見るに堪えなかった。プーチンと正恩は式典後のロ朝会談で、両国関係を称賛。プーチンはウクライナ戦争における北朝鮮兵士の戦いに謝意を示し、正恩は「ロシアを可能な限り支援する」と応じた。
式典の前日(2日)に行われた中ロ首脳会談も、戦略的な協力関係で一致。ロシアの国営ガス会社ガスプロムは同日、東シベリアから中国へガスを供給するパイプライン「シベリアの力」の供給量を380億立方メートルから440億立方メートルに増やすことで合意したと明らかにした。
中国も北朝鮮も陰に陽に、ロシアへの協力を惜しまない。ウクライナ和平に水を差す動きに、プーチンの高笑いが聞こえてきそうだ。
「ロシアも経済的にきつくなっているので、どこかで和平交渉が必要になりますが、プーチン氏はウクライナを支配する野望は捨てていません。軍事パレードで中ロ朝のトップ3人がそろったのは、まさに3カ国の軍事同盟をアピールするため。なぜ、そんなことをしたのか。停戦した場合を考え、ウクライナに中国軍を平和維持部隊として置きたいからです。プーチン氏にとっては自国の負担を減らしてNATOの脅威を遠ざけられるし、中国にとっては欧州への影響力を保持できる。西側には中ロが、東側には北朝鮮がにらみをきかせるという構図ができあがるわけです。和平合意を急ぐトランプ米大統領の思惑とは、まったく違う展開をたどっています」
トランプは中ロ朝そろい踏みを「悪だくみ」とののしるのが精いっぱい。和平は遠のくばかりだ。