現役自衛官が中国大使館に侵入──。衝撃的なニュースは、高市首相の不用意な「存立危機事態」発言で日中関係が悪化する中で、中国側に格好の攻撃材料を与えてしまった。


 事件は24日発生。東京都港区の中国大使館の敷地内に男が侵入し、建造物侵入容疑で警視庁に逮捕された。陸上自衛隊えびの駐屯地(宮崎県)の3等陸尉、村田晃大容疑者(23)だった。


 村田容疑者は容疑を認め、「大使に意見を伝えようとした。聞き入れられなかったら自決して驚かせようと思った」と供述。「中国側による日本への強硬発言を控えて欲しかった」との趣旨の発言もあったという。大使館の敷地内の植え込みからは刃渡り18センチの刃物1本が見つかっている。


 25日木原官房長官は会見で「法を順守すべき自衛官が逮捕されたことは誠に遺憾だ」と発言。中国側から申し入れと再発防止の要請があったと明らかにした。


■中国は「新型軍国主義」と批判


 中国側は外務省の林剣報道局長が会見で事件を猛批判。「日本政府が自衛隊員の管理や教育を怠った」「日本で極右思想がはびこり『新型軍国主義』が勢いを増して脅威になっている」と主張した。


 気になったのは、村田容疑者がヒラ隊員ではなく「幹部」であることだ。

陸自によれば、2025年3月に入隊し、今年1月に幹部候補生学校を卒業し、えびの駐屯地に配属されたという。


「3等陸尉は階級の名称で士官(幹部)の一番下。防衛大学校か一般大学から入隊したのでしょう。一般企業なら本社採用の大卒2年目といったところです」(海上自衛隊の元3等海佐で軍事研究家の文谷数重氏)


 村田容疑者の詳しい動機はまだよく分からないが、自衛隊の右傾化について、文谷氏はこう話す。


「中国はけしからん、という議論を真に受けたのでしょうか。大卒の幹部候補生は約8割が理系で一般教養の知識が乏しく、『ライト・イズ・ライト(右派は正しい)』という雰囲気に染まりやすい。幹部候補生学校では精神教育をやり過ぎるきらいがあり、講師には桜井よしこ氏(ジャーナリスト)や竹田恒泰氏(作家)ら右派を招いています」


 以前、防大の教授も同大の教育実態に警鐘を鳴らし、右派論客の講演に苦言を呈していた。02~09年に防大教授を務めた孫崎享氏は事件についてこう言う。


「高市政権下の今の日本の空気だと、自分(村田容疑者)の行動が国民に歓迎されるものだと判断したのでしょうか。昔なら『何をやっているのか』でしたが、世論に厳しく糾弾する雰囲気はないですよね」


 警察の捜査だけでなく、防衛省も背景をしっかり調べる必要がある。


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 防衛省は、3月5日情報本部所属の30代の1等陸尉が学歴詐称で停職4日の懲戒処分になったと発表した。関連記事【もっと読む】『30代エリート自衛官の学歴詐称がバレたきっかけとお粗末すぎた学位記』…では、詐称に至った動機など詳しく報じている。


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