オンライン取引の拡大によって、個人がつくった作品や一点物の商品を全国へ届けやすくなった。経済産業省が2025年8月に公表した調査では、2024年の国内BtoC-EC市場は26.1兆円、個人間取引を含むCtoC-EC市場も2兆5,269億円に達した。
販売の入口が広がる一方、写真だけでは分からない品質や、使い続けられる耐久性を誰が保証するかが問われている。

【その他の写真:坂中宗洋社長】

その課題に塗装技術から向き合っているのが、坂中宗洋氏が手掛ける「ムネペイント」である。白いスニーカーを顧客の希望に合わせて塗装し、世界に一足だけのデザインへ仕上げる。見た目を変えるだけではない。歩くたびに曲がり、地面や物へ接触する履物として、実際に使える質感、強度、耐久性を重視する。

スニーカーへの塗装は、平面の絵画とは条件が異なる。素材に合う下地をつくり、塗料を定着させ、曲げても剥がれにくい仕上げを施す必要がある。取材で坂中氏は、市販品のような完成度を目指し、下処理から乾燥まで工程を組み立ててきたと説明した。長年の外壁・防水塗装で得た材料知識が、その基準を支えている。

独自性が表れるのが、金属のような光沢を持つ「メタルカスタム」である。金属粒子を含む塗料は、そのままでは靴の屈曲に耐えにくく、表面が割れやすい。坂中氏は複数の靴を試作に使い、塗料メーカーにも相談しながら、下地、温度、乾燥方法を変えて検証した。
硬い展示品ではなく、曲げても割れにくく、履ける状態へ近づけた。

技術はスニーカーにとどまらない。ゴルフシューズや、靴の形をしたパターカバーにも展開し、利用場面に合わせた注文を受けている。取材時点では、通常カスタムを2万5,000円、メタルカスタムを8万~10万円程度と説明していた。正式価格は仕様により異なるため確認が必要だが、料金を事前に示し、相談しながらデザインを決める透明性を重視している。

制作期間もデザインによって変わる。取材では、通常仕様なら一日程度、複雑な柄は二~三日、メタル加工は乾燥を含め三日程度と説明した。完成までの工程を急がず、塗膜が定着する時間を確保するからこそ、注文が集中した際には納期が延びる。安さと速さだけでなく、実用品としての品質を優先する姿勢である。

注文が増えるほど、坂中氏一人の制作量には限界が生まれる。そこで並行して始めたのが、スニーカーペイントを学べるオンラインスクールである。自分や家族の靴をつくりたい人から、副業やプロ活動を目指す人までを対象とし、動画教材、文章やLINEによる質問、週1回のZoom実演、各地域での対面講習を組み合わせる。


初心者は、まず自分や家族の靴をつくるところから始める。必要な道具は手軽な内容なら二~三万円程度、本格的にそろえても通常カスタムでは10万円未満との説明だった。作品を家族へ贈り、次に知人から注文を受け、やがて副業へ進む。段階を踏んで技術と顧客対応を学べることが、趣味と事業の間をつないでいる。

取材では、年間3万9,600円、月額換算3,300円と料金を公開していた。10月からは受講料を4,500円値上げする予定としている。受講者は200人超、そのうち約10人がプロとして活動しており、一部の受講者は工房の作業を手伝い、坂中氏へ集中する注文を分担する段階にも進んでいる。学ぶだけで終わらず、制作経験と仕事の入口をつなぐ構想だ。

もちろん、受講すれば必ず収益化できるわけではない。塗装には反復練習が必要で、デザイン力、顧客対応、価格設定も本人が身につけなければならない。そのため、受講者数やプロ活動者数は集計時点を明らかにし、趣味としての学びと仕事としての成果を分けて伝える必要がある。

今後、坂中氏に集中する注文を、一定の品質基準を満たした修了生へ紹介できれば、制作待ちを減らすと同時に、地域ごとの仕事を生み出せる。
そこで重要になるのは、作風を統一することではなく、下処理、耐久性、納期説明など、顧客が安心できる最低基準を共有することだ。

第三者の視点で見ると、ムネペイントの価値は、高額な一点物を販売することだけではない。依頼者には価格と制作工程を見える形で示し、つくり手には動画、実演、対面指導を通じて技術を開いている。注文を囲い込まず、技術者を増やすことで市場そのものを育てようとしている。
【取材・執筆:Y.U】
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